連載企画 Human 梶原康司選手(パナソニック)挑戦

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第4回 果報は寝て待て2013年08月10日

 2000年(平成12年)11月17日に東京・新高輪プリンスホテルで開催された第36回ドラフト会議。梶原はテレビの置かれていない、大学構内の研究室にこもり、吉報を待っていた。

「指名があったら、研究室に電話連絡が入ることになっていたんです。その後、学校で記者会見をやるから、指名があるまでは研究室で待機してなさい、ということになって」

 5位あたりで指名があるかもしれない。そんな情報が耳には届いていた。ドラフト指名がなかった場合は、名門社会人チームへの入社が決まっていた。
 ドラフト会議が始まると、日米野球の大学選抜チームで出会い、「こういうやつらがプロに行くんだろうな」と感じた選手たちがどんどん名前を呼ばれていった。
 「こんなすごい同級生に出会ったことはそれまでなかった」と梶原に言わしめた中央大学の阿部慎之助は巨人が1位指名。法政大の広瀬純(広島2位)、阿部真宏(近鉄4位)、慶応大の佐藤友亮(西武4位)らの名前も挙がった。同じ九州地区で対戦経験のある山村路直(九州共立大)もダイエーの1位指名を受けていた。いつしか、ドラフト会議は6位指名の時間を迎えていたが「その頃には研究室で寝ていた」と梶原は言う。

 「大学選抜チームで上のレベルを知って以来、『いけるものならプロに行きたい』と思いながら野球に取り組んではきましたけど、『なにがなんでもプロ!』というよりは『指名されたらラッキー』くらいの気持ちでドラフトには臨んでいた。『自分の名前はもう呼ばれないな』と思ったら、急に眠たくなってきたんですよね」

南本(ジェイプロジェクト)

"阪神タイガース時代の梶原選手"

 すると携帯電話が鳴った。大学の友人からだった。

 「『おい、カジ! 阪神の8位指名で名前が挙がったぞ!』と言われて。この電話で初めて自分が指名されたことを知ったんです。結果的に『果報は寝て待て』みたいな感じになって…」

 このドラフトで阪神は川崎製鉄千葉の藤田太陽を1位指名。3位には狩野恵輔(前橋工高)、4位には赤星憲広(JR東日本)、7位には藤本敦士(デュプロ)の名が挙がり、梶原は阪神がこの年のドラフトで指名した最後の選手だった。

 プロの世界に足を踏み入れるにあたり、梶原はどんな目標を設定したのだろうか。
「何年で一軍に定着しようとか、そういった具体的な目標は立てなかったですね。とにかく大卒なんで『時間はそんなにない。すぐにでも一軍でやるくらいの気持ちでいないといけないんだろうな』という気持ちでプロの世界に飛び込みました。でも初めてのキャンプでは『うわ! やっぱりプロの選手はすごいな!』と驚きましたよね」
 アマチュア時代、飛距離には多少なりとも自信を持っていたが、プロの世界において「武器は飛距離」と言い切る気は起きなかった。既に阪神に入団していた同年齢の高卒出身選手の中には濱中おさむ(現在は治)がいたが、飛距離で勝てる気はしなかった。
 驚いたのは飛距離だけではない。ミート力という面でもプロの一軍レベルの高さを思い知らされた。

 「打撃練習でわかるんです。ミート力の違いが。自分は打撃投手の球でも、打ち損じて、打撃ゲージの上のネットに当たってしまうような当たりが何球もあるのに、プロの一軍クラスは打撃投手の球を打ち損じることなど、ほとんどない。飛距離よりも、確実性の部分でプロの凄さを実感しました」

 とはいえ、セールスポイントはバッティング。自信がないわけではない。一軍クラスとの現状の差は感じつつも、一方では「バッティングに関してはなんとかやっていけるのではないか」という感覚も芽生えていた。
 プロ一年目の開幕を二軍で迎えた梶原だったが、ファームでは開幕からレギュラーの座を獲得。上々といっていい、プロ人生の滑り出しだった。

(次回に続く)

 (文・服部 健太郎)

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