連載企画 Human 梶原康司選手(パナソニック)挑戦

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第8回 社会人で気付いた「バッティングの根拠」2013年10月02日

 心機一転迎えた2005年・社会人一年目。都市対抗出場を逃した悔しさをバネに、チーム一丸となった結果、秋の日本選手権で優勝。そして自身もベストナイン獲得。「自分の想像以上の素晴らしい野球の世界があった」ことを知り、梶原康司は瞬く間に社会人野球の虜になってしまった。

その後、2006~2012年までの7シーズンでパナソニックの主軸として、チームを6度の都市対抗出場に導き、2012年には7年ぶりベストナインも獲得。バッティング技術に関してはプロ在籍時以上の技術を備えているようにも映る。

そこで「30歳を過ぎ、打撃面の円熟味は年々増しているのでは?」という問いをぶつけてみた。梶原は否定しなかった。そしてこう続けた。

「実は28、29歳くらいの時に打撃がよくない状態が続いたんです。30歳の大台を前に『このままじゃだめだな。バッティングというものを大幅に見直す必要があるな』と思ったんです。一回過去のものは全部捨てようと」
具体的にはどのようにスイングを再構築したのだろう。

南本(ジェイプロジェクト)

パナソニック 梶原康司選手

 「それまでのぼくは、来たボールに対して、上半身でバットをバーンと強く出すんだという意識しかなかったんです。実際には下半身も使って打っているのでしょうが、下半身に対する意識はないに等しかった。調子が悪くなるときは、下半身の動き方に大きな原因があるんだろうけど、日頃下半身を意識していない分、どこをどうすれば修正できるのかがわからない。
しかし、それではどうしても不調期間が長くなってしまうし、あまりにも自分のバッティングの根拠というものが不足していると思ったんです。自分の打撃を作り直すため、まず取り組んだのは、とにかく下半身をしっかり使って打つ意識を強く持ち、下半身を実際に正しく使えるようにすることでした」

そこで梶原はグランド整備用のトンボを使って素振りをすることを思い立った。いざやってみると、下半身をしっかり使わないと長くて重いトンボをきちんと振りきれないことに気づかされた。

「下を使わないと、とてもじゃないけどトンボは振れないんです。ほかにも通常よりも長い長尺バットでティー打撃をしてみたりもしました。すると長いものを振るようになってから、どんどんバッティングがよくなっていった実感がありました。プロ時代にコーチたちから『下を使って打て』と言われても、当時のぼくは理解できなかったけど、『あ、このことを伝えたかったのかもしれないな』と思うことが30歳を過ぎてから、いろいろと出てきたんです」

投球を点ではなく線でさばく感覚を身につけたことも大きかった。

「それまでのぼくの打撃は最短距離でポイントまで出していく、いわば点で打つ打撃だったんです。それを後ろの手、左打ちのぼくならば左手を投球のラインに入れて線でとらえる感覚にしたところ、ポイントをキャッチャー寄りに近づけることに成功し、落ちる球も拾いやすくなった。逆方向にも打球が格段に飛ぶようになったんです」

 課題であった確率面が大幅に向上。芯に当たる確率が上がった分、ヒットだけでなくホームランも増加。打球の質も良くなった。梶原のバッティングに根拠が生まれ、悪くなった時の対処法の引き出しもずいぶんと増えた。

「昔は調子が悪くなっても、バットをたくさん振ればよくなるだろう、くらいしか考えていなかったんすよ。要は引き出しがなかったんです。バッティング談義になっても言葉にできるようなことがなにもいえず、すべてが感覚頼りだった。だから調子が悪くなると、とことん悪くなって、なかなか上がってこなかった。
でも、30歳を過ぎて、理屈を言葉にできるようになってきた。若い選手たちにも、単に『下半身を使え!』と伝えるのではなく、『左バッターの場合は、左ヒジと左ヒザを打ちに行く際に、同時に内に入れてから体を回しなさい。それが軸足を使うということ』といったように具体的に言えるようになりました。以前の自分ならとてもじゃないけど、こんな説明はできなかったですね」

 パナソニックの主砲・梶原康司は安堵に満ちたような表情で言った。
「社会人の世界で野球を続けていなかったら、永遠に気が付かないところでした」と。

(次回に続く)

 (文・服部 健太郎)

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