連載企画 Human 梶原康司選手(パナソニック)挑戦

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第9回 「パナソニックで野球をやることができて、本当によかった」2013年10月16日

 「30歳台に突入してから、バッティングのコツというものをつかんだ気がします」
いまやパナソニックで円熟の域を迎えつつある梶原康司はそう語った。

それまではどちらかといえば感覚頼りだった自身のバッティング。なぜ調子がいいのかが自分で説明できない。となると、なぜ調子が悪いのかもわからない。自分に説明できなければ、当然、他人にも説明できない。「他人に指導をする」という世界は自分にとっては苦手な分野だという自覚もあった。

ところが30歳台に突入すると、自分の打撃を説明できる要素が大幅に増えた。プロ在籍中にはなかった「打撃の引き出し」を社会人の世界で数多く築きあげることに成功した。

三十路を過ぎてからの進化を知り、筆者はふと思った。
「もしも今、梶原康司がNPBのファームの試合に出場したとしたら、いったいどのくらいの成績が残せそうな感覚があるのだろうか?」と。

南本(ジェイプロジェクト)

パナソニック 梶原康司選手

梶原は少し答えにくそうに苦笑いしつつ、次のように答えてくれた。
「少なくとも、阪神時代よりは、いい成績が残せそうな気がします」

もう1つ、聞きたいことを思い出した。9年前、阪神タイガースを退団し社会人・パナソニックに飛び込むことを決意した背景には「社会人の世界で活躍し、レベルアップすることで、もう一度NPBの世界に戻る!」という大きな野望があったことは連載2回目でも記した。「NPB復帰への野望」果たして現在も持ち続けているのだろうか?

梶原は「あります」と即答した後、こう続けた。「実際問題、NPBへの復帰なんて冷静に考えたら現実はあまりに厳しいし『バカじゃないの?』と言われるかもしれません。でも『最高峰の舞台でもう一回やってみたい』という気持ちは正直、今でもありますし、お酒の場とかでは周囲にも公言してます。
『おれもまだプロでもう一回やりたいんだ』と。

現実は無理だろうけど、そういう気持ちは持っている』ってね」

年齢のことなどを鑑みると確かに現実は厳しい。けれど35歳となった現在も、そういう気持ちになれるのは「ぼくがバッティングのコツをつかめる日が来るまで、野球を続けられたから」と梶原は言う。

「社会人の世界で野球を続けていなかったら、バッティングのコツなんて永遠に気が付かないところでしたから…。プロ在籍中にコツをつかめなかったことは残念ですけど、コツをつかむ前にクビになったり、野球をやむなく辞めることになってしまった人はけっして少なくはない。そう考えると、自分はまだ恵まれてるのかなと」

 事実、阪神タイガース時代のチームメートで、現在も定期的に連絡を取り合っている選手の大半は既に野球から離れた生活を送っている。

「普通の仕事についている人がほとんどです。中には何回も職を転々としている人もいます。久しぶりに会った人からは『え!? おまえ、まだ野球やってんの!?』と驚かれたりすることも多いです。でも、そういう人たちからは『おまえ、パナソニックで野球続けられていいなぁ』と、うらやましがられるんですよ」

では、もしも社会人の世界で野球を続けていなかったとしたら、梶原康司は今頃どんな仕事をしていたのだろうか?

「まったく想像できない…。こっちにいてもたぶん仕事がなくて、地元宮崎に帰って、何かしらの仕事をしていたんじゃないのかなぁ?」

続けて梶原はきっぱりと言った。「9年前に社会人野球のオファーを受諾して大正解だった」と。


「社会人野球は自分の予想していた以上に面白く熱い世界だった。この世界に入るまでは、選手、スタッフたちの都市対抗にかける想いがここまで強いとは思っていなかったんです。

でも実際は、高校球児が甲子園を目指す熱となんら変わらない。ぼくの高校の先輩で、社会人野球をやりきった人が、都市対抗のことを『オヤジたちの甲子園』と言ってたんです。たしかにそうだなと。甲子園を目指した高校生の頃の気持ちと今の気持ちってものすごく似てるんです。社会人の世界で野球を続けていなかったら、永遠に気が付かないところでした」

ここまで一気に言葉を紡いだ梶原康司。しばしの間があった後、もう1度ゆっくりとこの言葉を口にする。「社会人の世界に飛び込んでよかった。パナソニックで野球をやることができて、本当によかった…」。

 (文・服部 健太郎)

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