第1回 山口きららマウントG(山口県防府市)2011年11月24日
野球の本質的な魅力

"左から佐伯和哉、藤井祐"
「ずっとそうなんですけど、今年もどちらかというと打撃のチームです」と笠原助監督が話すように、主将で4番の山田大輔を軸に今年のチームもいかんせん、攻撃型チームという印象が強い。実際に今年のクラブ選手権でも、福井ミリオンドリームズ戦で16安打、準々決勝で前年覇者の所沢グリーンベースボールクラブからも二ケタ安打を記録している。
なかでも企業チームを経験した選手が主力を担っていることも大きい。前チームの伯和ビクトリーズでも4番に座っていた山田を筆頭に、三菱重工長崎の補強選手として都市対抗も経験したことのある1番の松本浩一郎。
さらに現在3番打者として活躍している河崎友徳は、IBM野洲やIKKOを経て入団した選手であり、俊足巧打の外野手・上ノ内晃も山田と同じ伯和ビクトリーズから移籍してきた。それだけにその経験を生かすということでも、彼らに懸かる期待も大きい。
だが、首脳陣としては「打撃のチーム」という現状に満足しているわけではない。登録上、投手陣は8人だが、仕事の都合上など実際は限られた数名の投手を回しており、実は笠原助監督もここをポイントにあげている。その投手陣の柱となっているのが、右サイドハンドの佐伯和哉である。佐伯は、宇部商時代に控え投手だったが高校卒業後、山口きららマウントGに入団し、メキメキと頭角を現している。
「高校の時は3番手か4番手の投手でしたが、ここで野球をするようになって成長しました。それも入団して2年目が過ぎたくらいに上からサイドに変えてから、何かが吹っ切れましたように思います。試合でチャンスを与えてもらうようになったり、(チームメイトの)河崎さんと同じ愛知学院大出身の磯村(秀人(当時・東芝のエース))さんからサイドハンドのアドバイスをいただいたことも大きいですね」(佐伯)

"山口きららマウントG 藤井投手"
さらに「企業チームにも嫌がられている」という技巧派左腕・藤井祐のピッチングも面白い。同じ腕の振りから120キロ台のストレートやチャンジアップを自在に操ることによって、相手打者のタイミングを狂わせ、さらにテンポのいい投球リズムからも味方守備陣も守りやすい。つまり、打撃チームであるチーム全体にも好影響を与えていることにもなっている。
そのようにそれぞれの選手たちから感じられることは、これが強みであるとか、弱みであるかということではない。真剣味があるクラブチームだからこそ、感じられる同じベクトル。そこに新しい可能性が見出されることだろう。
最後に西山部長が、今年の交流戦での出来事を嬉しそうにこう話してくれた。
「(タレントで応援団長の松村邦洋を)代打で打席に立たせてみたんです。そしたらヒットを打ったんですよ。しかも、センター前にクリーンヒット。(山本)譲二さんがベンチから腕をぐるぐる回して、ベンチも盛り上がって、そして打った本人もビックリしていましたからね」
普段から真剣味のある野球をしているからこそ、味わえるこんな一場面。野球の本質的な魅力をどう伝えていくのか。山口きららマウントGは、そんなことも教えてくれる。
(文=アストロ)