第4回 2013年 注目のチーム紹介『 ジェイプロジェクト』 (愛知県名古屋市)2013年05月09日

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ジェイプロジェクト
堀田コーチと1年目の新出

ジェイプロジェクト 井田投手

 2012年7月17日、18時試合開始のゲームにも関わらず、4000人が集結した東京ドームのスタンドを見て、胸がふるえた。
ジェイプロジェクトは東海地区を中心に約50店舗の居酒屋を経営している企業だ。そのため、初出場といえど、夜の試合であれば社員がほとんど応援に来られないのは、わかっていた。
「当日は1000人しか集まらないです」
 辻本弘樹監督や選手たちは、事前にマネージャーからそう聞いていたのだ。しかし、いざ、東京ドームに足を踏み入れると、スタンドが青色の応援団で埋め尽くされていた。

 自分たちを応援してくれる人々へ、また野球が出来る環境がここにあることに、選手たちは心から感謝しながら、夢の舞台で闘いぬいた。

 試合は、JX-ENEOSに1対2で惜敗したが、この都市対抗で過去9度優勝を経験している強豪相手に善戦したといえるだろう。
 創部4年目の夏、憧れのフィールドに立ち、彼らの夢はまずひとつ、叶えられた。

創部4年目で初めて伝えた“優勝”への思い

「向かうべき、道筋が見えていなかった」
 辻本弘樹監督は2年前をそう回想する。

 ジェイプロジェクトは創部してからの3年間。都市対抗予選で一勝もあげることが出来なかった。チームが成長するまでには、時間を要した。また、他企業のチームと比べると、“厳しい環境”と捉える選手も少なくなかったという。
 朝9時から13時までは野球部の練習時間が確保されているが、夕方17時から24時までは、本社が経営する名古屋市内を中心とした居酒屋で働いている。そこでは、通常のスタッフと同様に、シフト制で出勤日が決められているため、彼らが連休となると、店舗としても回らなくなる。そのため、遠征もほとんどが日帰りだ。
 実際に、昨年出場した都市対抗大会でも、試合が終わった22時にはバスに乗り込み、東京ドームをあとにした。

練習を終えた17時以降は居酒屋で働く井田投手

「昨シーズンを迎える前、周りのチームと比べた時、自分たちは環境が劣っていると感じて、それが厳しいと思った選手の多くはチームを去っていきました。今、残っているのは、それでも野球がやりたいという選手たちです。こういう環境だから負けたくない。深夜1時まで毎日仕事をやっても、それでも野球が好き。そんな選手たちが残り、チームを強くしてくれました」
 だからこそ、辻本監督は、そんな選手たちに2012年の春、創部して初めてこの言葉を伝えることが出来た。

「都市対抗で優勝しよう」
 まだ、都市対抗予選で1勝もしていないチームに掲げた大きな目標。しかし、彼らもまた、それが遠い目標だとは決して感じていなかった。選手自身も、そのためにここで野球をやると決めたのだ。
 また、そういった環境の中で野球をやっているからこそ、目標を明確にした時、ベクトルは同じ方向に向きやすかった。

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