連載企画 Human 梶原康司選手(パナソニック)挑戦

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第1回 ターニングポイント2013年07月02日

 「梶原~! 未来のタイガースのクリーンアップはおまえやで~! 期待しているぞ~!」

 今から12年前となる2001年4月。阪神タイガースの二軍本拠地である鳴尾浜球場にて、常連の男性年配ファンが大声で発した激励の言葉が球場内に響きわたったことをよく覚えている。

「あれが去年のドラフト8位入団のルーキー・梶原やで」
「大学出とはいえ、新人でいきなりクリーンアップを任されるなんて、たいしたもんやな」
「こいつのバッティングはなかなかすごいで!」

 そんなファン同士の会話もあちらこちらから聞こえてきた。そして、その期待の高さに応えるように、梶原は一年目からファームで不動のレギュラーを獲得した。

南本(ジェイプロジェクト)

"阪神タイガース時代の梶原選手"

 ルーキーイヤーの成績は79試合に出場し、打率.277、3本塁打。「ファームの4番」が指定席になるまでにさほど時間はかからなかった。
 2年目は86試合に出場し、打率こそ前年と同じ.277だったが、本塁打は10本に増え、初の一軍昇格も果たした。一軍では4試合、3打数無安打に終わり、短期間での二軍降格となったが、球団の期待値の高さは十分に感じ取れた。
 3年目はウエスタンリーグで3位となる打率.310をマーク。課題であった確実性の向上を存分にアピールし、迎えた4年目の2004年。梶原は夏場に右手の有鉤骨をプレー中に骨折。約3か月の長期離脱を余儀なくされ、復帰試合はウエスタンリーグペナントレースの最終戦。出場数はプロ入り以来最少となる66試合、打率.273、1本塁打の成績で4年目を終えた。

 勝負の5年目に向けて、気持ちを切り替え、練習に励んでいた10月初旬、梶原の携帯電話が鳴った。球団マネージャーからだった。

「明日、虎風荘(ファームの合宿所)の2階に来てほしい」

 用件は伝えず、時間と場所を指定するだけのマネージャー。この季節、そんな電話がかかってきた同僚を過去に何人も見てきた。気づけば、電話越しで、マネージャーに尋ねていた。

「ぼく、クビですか…?」
「今は言えない。とりあえず明日きてほしい」

 これは間違いなくクビだ。梶原は確信した。そして翌日、指定された時間に虎風荘を訪れると、案の定、戦力外であることを球団から通告された。

 なぜ梶原は、戦力外となったのか。未来のタイガースを背負う主砲候補ではなかったのか。4年目こそ、ケガに見舞われたが、4年間を通じ、ファームでは結果を残している。技術的な成長も見て取れる。一軍で与えられたチャンスもたったの3打席のみ。そんな彼がなぜ、たった4年でタイガースのユニホームを脱がなくてはならないのか。

 今年、35歳を迎えた梶原は9年前の秋を次のように振り返る、
「通告された時は、『ケガをしたからかなぁ…』と思った。ひとつの大きなケガでクビを切られても仕方がない厳しい世界に自分がいるという自覚はあったし、『なんでなんですか?納得いきません!』と食い下がったところで、クビがつながることはないだろうと思った。『そうですか。わかりました』というほかなかった」

 まだプロの世界で勝負し続けたがっている自分がいた。プロ野球選手で居続けられるなら、タイガース以外の球団でも構わない。梶原は、現役続行を望む選手たちが集う、合同トライアウトに参加することを決めた。

「骨折の影響で、夏場以降、ろくにバットを振れていなかった。トライアウトに向けてしっかり調整しよう。自分にそう言い聞かせ、気持ちを切り替えたとき、当時、タイガースの一軍監督だった岡田(彰布)さんから連絡があったんです」

 梶原のプロ1、2年目にファームの監督を務めていたのが岡田だった。岡田は梶原に向かって言った。
「松下電器から梶原が欲しいという話が来ている。社会人の世界で野球を続ける選択肢もある。どうだ?」

 梶原康司、26歳の秋に訪れた野球人生のターニングポイントだった。

(次回に続く)

 (文・服部 健太郎)

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