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第25回 セガサミー 横田 哲投手 【後編】2014年12月02日
【目次】
[1]バッターが嫌がることを突き詰める
[2]バッターが立つと湧き上がる闘争心
[3]ストレートに立ち返り目指す理想
バッターが立つと湧き上がる闘争心

ピッチャー・横田哲(セガサミー)
新球・チェンジアップをひっさげ臨んだ大学4年の全日本選手権で初優勝。この大会での活躍が評価され、セガサミーへと進んだ。そして1年目からいきなり都市対抗予選で活躍、チームを本戦へと導く。
「社会人野球は打者一人ひとりのレベルが高いと感じます。それに、都市対抗の予選の雰囲気も……それはハンパなものではないくらい重圧がかかります。でも、社会人になって数か月で登板したので、まだよくわかってない自分もいて。わりと飄々と投げられたんです」
その快投ぶりを見ていたのがサムライジャパン社会人代表だ。前年12月の招集時にはなかった横田投手の名前を、急遽リストアップ。第2次候補合宿に呼んだ。
7月16日の第17回アジア大会メンバー発表の日。メンバー入りはマネージャーから聞かされた。
「急に追加招集されたので、マジか、と(笑)。さらに頭が整理されてない中でメンバーに入ったので、嬉しさ半分、驚き半分みたいな感じでした」
実際にお会いして話してみると、「視力悪いんです」と野球をする時以外はかけているというメガネ姿に、どこか涼しげな表情――とても自然体である。甲子園に対する情熱もそれほどなかったというし、大学で野球を続ける希望も当初はなかったという。
クールというほどでないにしろ、とてもあっさりした印象だ。この冷静さが、マウンド上でバッターを手玉に取る老獪なピッチングの秘密なのだな……。そう勘ぐっていたが、どうも違うらしい。サムライジャパンでの話だ。
「都市対抗の予選とは種類の違う重圧といいますか。試合前の国家が流れた時点でゾワゾワ鳥肌がたってきて。緊張はしてないんです。でも見えないプレッシャーといいますか、慣れないことも多く、本来のピッチングとはだいぶ違うものになってしまいました」
アジア大会では初戦の中国戦に3番手として登場。1回を投げ被安打1の2三振で無得点。無難に結果を出して見せたが、彼が言っているのは先発した準決勝のチャイニーズ・タイペイ戦のことだろう。1回2/3を投げ被安打4の1死球、まさかの5失点。相手を手玉に取り、安定したピッチングを身上とする横田投手からすると、たしかに“らしく”ない。
「自然と力が入ってしまいました。投げたい気持ちが前に前に出てしまって上体が突っ込んでしまい……。それでカウントを悪くしては打たれる悪循環。次があればまた違うと思いますけど、まるでダメでしたね」
グローブに入れている言葉は「泰然自若」。つねに平常心を心がけたくて入れた言葉だという。
「試合中にカッカしてしまう時があるので、グローブを見て落ち着かせているんです」
目の前で話している印象からは想像がつかないが、「打者がバッターボックスに入るとプチッとスイッチが入るんです」という。「カチッ」ではなく「プチッ」という表現。それは入るのでなくて、切れるのでは……。ともかく、マウンド上では怖いほど負けず嫌いのスイッチがオンになるということだ。
ちなみに、アジア大会に持参したグローブには「泰然自若」の文字が入っていなかった。もし入っていたものを持参し、試合中に見返していたら……結果はどうなったであろうか。