安部 建輝(NTT西日本)
安部 建輝
- 所属チーム:
- NTT西日本
- 所属都市:
- 大阪市
- 球歴:
- 近畿大付 – 近畿大学
- ポジション:
- 投手
- 投打:
- 右/左
- 身長:
- 180cm
- 体重:
- 81kg
- 寸評
- 2年目からドラフト候補として注目されてきた安部 建輝。昨年の都市対抗でも完封を見せるなど個人的には指名候補の一人としてあげていたが、なかなか縁がなく、4年目を迎えた。そして今年のドラフトでは横浜DeNAベイスターズから6位指名を受けた。果たして昨年から大きく変わったのか、都市対抗の投球からチェックしていきたい。
(投球内容)
去年の安部の投球はストレートとフォークのコンビネーションが中心で、縦の変化で使えるのが彼の強みであった。今年もストレートとフォークのコンビネーションが光った。
右オーバーから投じる直球は常時135キロ~141キロを計測。速球のスピードはあまり変わっていないが、内外角のコントロールは相変わらず抜群で、ここぞという時にコーナーギリギリに投げ分けるコントロールが大きな武器である。
元々、140キロ台後半の速球を投げていた投手だが、先発となると球速を落として140キロ前後となる。確かに球速は物足りないかもしれないが、コントロールされた140キロを一試合通して続けられるのなら、それはプロで通用する。要所で145キロ級の速球を見せられるようになると、もっと投球の幅は広がる。
125キロ前後のフォークは打者の手元で鋭く落ちる変化球で、彼にとって生命線だろう。このフォークを絶対にプロでも使える球種にすること。この変化球を使えなかったら、彼は通用しない。それ以外には120キロ前後のスライダー、120キロ前後のツーシームを投げ分ける。
クイックは1.3秒台とそれほど早くはない。そのため牽制は何度も入れたり、二塁時はモーションを変えたり工夫している。フィールディングの動きもよく、
(投球フォーム)
ノーワインドアップから始動する。左足を真っすぐ上げて、右足は一本足で立つが、軸足の膝を適度に曲げて体重を乗せている。その後、ショート方向に足を伸ばしていき、お尻も一塁方向へ落とし、柔軟に接地する。左腕のグラブを真っすぐ伸ばして正対させていく、やや左肩の開きの早さが見られる。出所は見易い形となっている。
接地した時にあまり肘が上がっていない。昨年はもっと肘が上がっていたイメージがあったが、グラブの開きが早く、胸の張りが弱いので、角度ある直球を投げることができていない。もう少し胸を張って状態で鋭く腕が振れるようになると、球速は伸びていくのではないだろうか。
軸足の使い方を見ると、軸足を折り曲げ、軸足をプレートに押し付けることができている。体が浮かずに、重心移動ができているので、安定した体重移動ができている。
リリースを見ると肘を使い打者よりで離すことができており、良いリリースポイントで離すことができている。フィニッシュの形も良く、制球を司る上では安定したフォームといえる。
- 将来の可能性
- 特別変わった点はないが、ただ技術的にも、精神的にも成熟期に達し、安定した実力を発揮できる投手になったこと。ルーキー時代に見せた爆発力はないだろう。ただその分、安定して実力を発揮できるようになったことで、計算が立てやすい投手ではないだろうか。いきなりエースクラスというわけではない。ただ投手力が弱いベイスターズにとっては大きな戦力になっていきそうだ。個人的には先発として育てていきたい投手。ベイスターズの状況を考えると凄みはなくても、安定した実力を発揮できる安倍は1年目から起用されることが多くなりそうだ。個人的には中継ぎなら30試合~40試合。先発となら5勝前後を期待してみたい。
- 情報提供・文:2012.12.24 河嶋 宗一
- 寸評
- 今年のドラフト候補に挙がる安部 建輝。社会人入りするまでは全く注目を浴びていなかった投手であった。高校時代は一学年下に阪神に在籍する鶴 直人がいた。大学時代はソフトバンクに在籍する巽真吾、東邦ガスに所属する谷口 友基、日本新薬に所属する滝谷 陣と投手陣が揃い登板機会はなく、4年間で通算16試合32イニング1勝にとどまった。しかし社会人1年目のスポニチ大会で大ブレーク。鷺宮製作所戦で1失点完投勝利を挙げ、一躍その名を挙げた。以降、ドラフト候補として注目され、勝負の2年目では不調に終わり、3年目を迎えた。3年目の今年はエースとしての役割を全うし、都市対抗出場に貢献。そして勝負の都市対抗で完封勝利を挙げ、スカウト陣に大きなアピールを見せた。
(投球スタイル)
ストレート 144キロ
常時130キロ後半~142キロ
スライダー 125キロ前後
フォーク 130キロ前後
やや威力不足を感じたストレートは体格が大きくなったことでストレートには重量感が感じられ、プロの投手に近いストレートにレベルアップしてきた。スピードは140キロ前半だが、ストレートを磨いてきたのは好感。体格はしっかりしているので、馬力を全面に出せば140キロ台後半は十分に見込めるだろう。しかしコントロールのない140キロ台後半よりもストライクが取れて低めに集まる140キロ台前半の方が断然実戦的。非常に重みのあるストレートが低めに集まっていた。
変化球はスライダー、フォーク。決め球であるフォークの落差は中々のもので、空振りを奪えるものであり、これはプロでも決め球となり得るものだろう。両サイドにコントロール出来て、決め球にフォークがある。プロで活躍出来るスキルを備えている。
(クイックモーション)
気に入らないのはクイックタイムは1.3秒~1.5秒前後と遅いことである。0.1秒の遅さが命取りだけに個人的には素早いクイックを望みたいが、軸足にしっかりと体重を乗せて、しっかりと着地した上で体重移動していく投手なので、クイックモーションでは軸足に体重が乗らず、突っ込んだフォームになり、ストレートが生きづらいのだろう。25歳を迎える社会人3年目の投手がクイックをやらないのは無意識ではなく、何かしらの根拠があると考えられる。
(配球)
・右打者
外角中心にストレート、スライダーを投げ分ける配球。時折、インコースを見せながら、カウントを取り、ウイニングショットであるフォークで空振り三振を奪う配球。両サイドのコントロールが安定しており、フォークもしっかりと落ちているので、三振を積み重ねれる投手だ。
・左打者
外角中心にストレート、スライダーを投げ分け、要所でフォークを織り交ぜて空振り三振を奪う配球。
(投球フォーム)
ノーワインドアップから始動する。左足を真っすぐ上げて、右足は一本足で立つが、軸足の膝を適度に曲げて体重を乗せている。以前よりも太もも、お尻がかなりがっしりして、ぶれない安定性が出てきた。その後、ショート方向に足を伸ばしていき、お尻も一塁方向へ落とし、柔軟に接地する。
左腕のグラブを真っすぐ伸ばして正対させていく、やや開きの早さが見られ、出所は見易い形となっている。
コンパクトにテークバックをしていき、しっかりとトップに持っていき、リリース。球持ちは素晴らしく、前で離すことができている。何より素晴らしいのは頭も突っ込まず、体重も後ろに寄りかかることもなく、真っ直ぐに平行して、離すことができていることだ。軸足の押し付けはできており、そして蹴り上げも強い。フィニッシュの形も良く、非常に土台の良いフォームといえるだろう。
足をあげた時のバランスの良さ、体重移動、球持ちに優れたフォームであり、安定してコントロール出来るフォーム。やや開きの早さが見られるのが残念だが、バランスの良いフォームであり、更なる可能性を残す投球フォームである。
- 将来の可能性
- 素質を大きく伸ばしたというよりも自分の力をようやく全国の舞台で披露したという印象が強い。投手としての雰囲気の良さ、投球の完成度、投球フォームの完成度の高さ。まさに好投手という言葉が嵌る投手である。やや調子が悪くても140キロ中盤まで伸ばすようになったのは、しっかりと鍛え込んで馬力が大きくなったということであろう。
ドラフトでは中位の指名が予想される投手であり、先発不足に悩んでいる球団はお薦めの投手ではないだろうか。地道な努力で巽と同じ舞台に立とうとしている。巽を追いつけ追い越せという気持ちで、将来は先発投手として活躍することを期待したい。
- 情報提供・文:2011.10.27 河嶋 宗一
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