2013年11月07日 京セラドーム大阪(大阪ドーム)

新日鐵住金かずさマジックvs富士重工業

第39回社会人野球日本選手権 決勝
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優勝旗を手にする米田真幸主将

 勝負はたった1点で決まった。
 6回裏、新日鐵住金かずさマジックは先頭の1番・米田真幸がサードへの内野安打で出塁。2番・田中 健が1球で確実に送った。相手投手の畠山太が処理した球をタッチしようとしても、簡単にアウトにならず、一歩下がって逃げた。鈴木秀範監督は、「バントもでき、エンドランもできる」というキーマンの田中が、1点に繋げるお膳立てをした。
 3番・佐々木 陽が四球で歩き、4番・澤山翔太が打席に立った。この時、ネクストバッターズサークルにいたのが、左打者の5番・渡辺傑ではなく、右打者の内田秀行だった。

 『澤山との勝負の先に、代打・内田がいる』。そう、相手サイドに見せた鈴木監督。
 澤山は三振に倒れ、代打・内田が告げられた時、富士重工業の水久保国一監督が動いた。「ピッチャー・當間」。そうコールされ、右腕の當間一生がマウンドに向かった。

 右打者の内田に対し、右投手を送られた鈴木監督だったが、打席に向かう内田に託す。投球練習の間、「畠山さんのイメージで打席を待っていた」という内田の元に、鈴木監督や三塁ベースコーチの秋武祥仁コーチが駆けよって声を懸ける。

 「當間に代わりましたが、データもあって、スライダーがどんな感じかとかをイメージした」と内田は打席に立った。場面は二死一、二塁。

 1球目 ボール(変化球)
 2球目 空振り(変化球)
 3球目 空振り(変化球)
 4球目 ファウル(変化球)
 5球目 ボール(変化球)
 6球目 ファウル(変化球)
 ここで内田は、ネクストバッターズサークルに戻り、バットに滑り止めのスプレーをかけた。

 7球目 初めて内角にきた変化球を引っ張ってファウル。粘る間にも、「空振りをしたが、三振をするタイプの投手じゃなかった。(スライダーやフォークに対しても)当てられる」と思っていたという内田。

 そして8球目。外角に落ちる変化球に、内田のバットが届き、打球はレフトとショートの間へフラフラと上がった。レフトの金山隆一が懸命に前へと走る。「捕るなー」と思って走った内田。その願いが叶い、金山のダイブがわずかに及ばず、ボールは人工芝に落ちた。二死でスタートを切っていた二塁走者の米田が、ついにホームベースを踏んだ。
 「今日の試合がスタメンではないのは悔しかった。悔しさを晴らすには、代打で結果を出すこと。汚いヒットでしたが、それができたことは良かった」と、勝負の1点に貢献できたことを喜んだ内田。2回戦はスタメン出場していたものの、代打で出場した3試合はいずれもその打席でヒットを放った。
 鈴木監督も、「内田には(スタメンで使えず)申し訳ないのですが、とっておきの時にとってあるので、理解してくれと言いました」と殊勲打の内田に感謝の言葉を送った。


 試合が終わり、「嬉しいのと寂しい(気持ち)が両方です。もっとこのチームで野球をやりたい」と涙を流した鈴木監督。プロ指名を受けた岡本など、今季限りでチームを去る選手もいるだけに、終わりが近付くにつれて、こみ上げる気持ちが抑えられなくなっていた。
 福岡ソフトバンクとの入団交渉が迫る岡本は、「みんな、会社やファンの気持ちを背負って勝つ為にやっている。高校では感じられなかったこと。色んな人が応援して下さる。社会人野球に来てよかったなと思っています。3年間でやれたことは財産になります」と社会人生活を振り返った。

最後に涙を流す指揮官に対し、米田主将がこんな言葉を発した。「夏、(都市対抗の頂点を獲りに)行きましょう」。
市民球団・新日鐵住金かずさマジックが掴んだダイヤモンド旗。もう一つ、黒獅子旗獲得という夢の続きが残っている。

(文・松倉 雄太


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