第2回 ヨーロッパの野球事情と、オランダ野球2013年07月01日
【目次】
[1]ヨーロッパの野球事情
[2]WBCでのオランダの活躍の背景

まず、ヨーロッパでどれだけの国が野球をやっているのだろう?とお思いの方もいらっしゃると思いますが、欧州野球連盟(1953年設立)に加盟しているのは全部で39カ国もあるのです。その中でプロリーグと呼ばれるのはオランダとイタリアの2カ国しかありません。
その他の国々でもリーグ戦は行われていますが、オランダやイタリアのリーグ以外の国の選手は、私のような外国人選手以外は基本的にはそれぞれの仕事を持ち、平日に数回練習をし、週末に試合を行うという形を取っています。
ただし近年は、MLBがコーチをヨーロッパ各国に派遣したり、グラウンドなどの施設を作る際にMLBが出資したり、さらにはヨーロッパ選手を対象にMLBがトライアウトツアーを開催していますので、実はヨーロッパの選手は毎年のようにMLBに引き抜かれていっています。
そこはさすがMLBだなと思います。世界の野球に貢献するためのお金は惜しみませんし、ヨーロッパ選手権などの大きな大会には必ずMLBのスカウト達が、球場のバックネット裏に集結しています。日本の野球界とMLBの大きな違いはそのフットワークの軽さかもしれません。今述べたようなことが今回のWBCでのオランダやイタリアの躍進の理由だと考えます。
MLBが設立したアカデミーにヨーロッパ各国の選手を集めて鍛え上げ、その後アメリカ本国でプレーさせ、彼らが得た知識や技量を母国に還元する。その努力が今回のWBCで実を結んだと思っています。そのヨーロッパでの実情を知らないのは、実は日本人くらいかもしれません。気がついたときにはMLBが日本にアカデミーを作り、若い年代の選手をごっそりアメリカに持って行くことが起きてもおかしくないと思っています。
ヨーロッパにおける若い年代の育成に関してですが、まずそれぞれの球団はサッカーチームのような組織図で球団運営をしています。具体的に言うと、各球団には1軍2軍があり、さらに年代別にカテゴリ分けされた子供たちのチームがあり、ソフトボールチームもあり、シニア世代のチームもあり、という形を取っています。 球団によっては母体となるサッカーチームが、野球チームやバスケットボールのチームを持っていたりもします。ヨーロッパでは学校で部活動という仕組みを持たないので、日本の硬式少年野球チームのように、学校から帰宅後、それぞれが課外活動としてスポーツチームに所属するというのが通例となっています。
日本とは違う仕組みですので、日本で言う甲子園のようなトーナメント方式の大会は存在せず、年代別にカテゴリ分けされたチーム同士でリーグ戦を重ねて実力を伸ばしていきます。
そして国際大会開催の時期が来れば、それに合わせて選手を招集するという形を取っていますので、まさにサッカーのスタイルそのものなのです。プロリーグを持つイタリアやオランダも含めヨーロッパの各球団は、常駐するコーチ陣が選手への指導をし、外国人選手が子供たちへのコーチングにも関わったりもしています。私自身も今所属しているフランスの球団では、大人のチームから子供のチームまで、全ての練習メニューを私が決めて選手たちへ指導をしています。
日本では、このようにサッカーに近い運営の形を野球に当てはめるのは難しいかもしれませんが、プロや高校野球レベルというよりも、より若い年代の育成機関として、さらには地域活性やスポーツ振興を目指す自治体の活動という観点で非常に良い運営方法なのではないかと思っています。
各競技が同じ地域で同じチーム名として活動し、その地域を象徴するスポーツクラブとして活動できれば、人も自然と集まってきます。人が集まればお金も回ります。そして財政が潤えば強化費に回すことができて選手の実力も伸びていきます。良い選手を輩出して育成機関として認知されれば地域活性にも繋がります。
現在の少年野球界で常態化しているお手伝いコーチなどの存在もなくなり、よりプロフェッショナルな育成が若い年代で行えるのではないかと思っています。
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