第4回 MLBも注目!! ドイツ野球のポテンシャル2013年10月05日
【目次】
[1]ドイツ人選手の高いポテンシャルを感じたトライアウト
[2]確実に高まっているヨーロッパ野球の波
ドイツ人選手の高いポテンシャルを感じたトライアウト
ドイツ野球の発展、そしてドナルド選手に続く逸材を自分自身の目で見てこようと思い5月7日のMLBトライアウトを取材に行ってきました。
トライアウト当日は、平日にも係わらずドイツ国内から、そして近隣のスイスなどから合計45名の選手が参加しました。年齢は15歳から19歳ということで、やはりMLB側としても即戦力の選手をという目線ではなく、育成を含めた目でヨーロッパにおいてトライアウトを開催していることがよく分かります。

Jendrick Speer イェンドリック・スピアー (Paderborn Untouchables, Germany) 32歳
日中の15時から始まったトライアウトでは、まず海外では定番の60ヤード走の計測から始まり、その後外野手はライトからの返球の審査、そして内野手はサード、もしくはショートでの守備の審査と続いていきます。私はアメリカのロサンゼルスでMLBのトライアウトに参加したこともあるのですが、正直に言わせて頂くと、外野手も内野手もゴロやフライの取り方がどうとかは全く関係なく、肩の強さを審査しているように見えます。実際にスカウトの方に聞いてみると、肩の強さを見ていると公言する方もいるので、それはそれで分かりやすくて良いと思います。それは投手でもそうです。どんな球種を持っているかというよりも、まずどれだけ速い球が投げられるかを見ているのは間違いありません。もちろん特徴のある球種があって、それに加えコントロール良く投げられれば尚良いということです。
日本のトライアウトでも同様のことが言えるのかもしれませんが、トライアウトではやはりどこか一点秀でている部分があることが求められるということがMLBのトライアウトを見ていると顕著に表れているように思います。捕手の二塁への送球審査が終わったのち打撃審査に移るのですが、これもやはりスイングの形というよりも、まず遠くへ飛ばした選手が目を付けられます。
体が小さく主にライナーを内野の頭上に打つような選手には酷なのかもしれませんが、かといってスカウトの方々はそういう選手を見逃したりはしません。そのような選手でも足が速かったり、あらゆるポジションをこなせたり、少しでも将来の可能性を感じさせてくれる選手だと、契約を前提にアメリカやドミニカに呼び、練習試合などへの出場を打診し、そこでの様子を見てみたいと提案してくれたりもします。
今回のトライアウトを見ていて、日本のトライアウトと圧倒的に違うと感じたのが、時に審査を止めてスカウトの方が選手に直接技術指導をすることがあるということです。これは日本では絶対に有り得ないことであり、非常に感心したことでもあります。ヨーロッパでは学校での部活動という仕組みがなく、それこそ甲子園のような学校単位での大会がないので、MLBのトライアウトというのは選手のモチベーションを高めるために非常に重要です。私はこうしてヨーロッパに来てトライアウトをすること自体、MLBは世界の野球に非常に貢献していると思っているのですが、実際に技術指導をして選手の個々のレベルを上げる努力をして下さるというのは、開催地のドイツ側としても非常にありがたいことなのではないでしょうか。
今回、マインツでのトライアウトを見た全体的な印象としては、ドイツ人は体が非常に大きくパワーに関してはヨーロッパ内でもオランダやイタリア野球に匹敵するものがあると思いました。しかし年齢が若いということもあり、プレーの正確性に乏しいという印象を受けました。それは守備において送球が安定せず、捕ることと投げることが全くバラバラになってしまい、元々持つ肩の強さを十分に発揮できていないという印象です。私はMLBのスカウトではないですが、私の目からでもそう見えているくらいですから、スカウトの方々もその辺りのことはすでに分かっているのではないでしょうか。ただし彼らの持っているポテンシャルというのは非常に高いということが見て分かりましたので、逆に言うとまだまだ成長する余地が十分あるということです。
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また、20歳のドイツ人プレーヤーを来年6月からFUKUOKAで受け入れようと考えています。日本の野球を是非とも学びたいとのことでの来日です。大変パワフルな選手ですが荒削りで上手さは感じません。将来アメリカを目指すにしても、日本のきめ細やかな野球を高く評価しているドイツ人は多数いると言うことや、日本と繋がりたいと思っている指導者やプレーヤーがいることも知ってほしいと思います。
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