石田雄太の斜説

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第6回 松坂大輔の現在地2013年11月05日

 掌を返すとはよく言ったものだねぇ。

 野球という世界、結果がすべてとはいえ、あまりにも結果から逆算した物言いをするメディアが多すぎやしないか。もちろん、野球好きが酒場で語るのは自由だ。ただプロの売文屋なら、もう少し先を見通した物言いができるようになりたいと、自戒を込めて(←ここ、強調)、己に言い聞かせなきゃならん。
 打たれたボールの叩き出したスピードガンの数字を見ては、球速が落ちたから打たれるんだと酷評する。抑えたボールの叩き出したスピードガンの数字を見て、キレがあるからだと持ち上げる(キレって何だ?)。

 レッドソックスをワールドチャンピオンに導いた上原 浩治のストレートが今年、突如として150キロを叩き出すようになったという話は聞いたことがない。レンジャーズで特大のホームランを打たれたときは、まっすぐがあの程度のスピードではメジャーのバッターには厳しいんじゃないかと言われてしまうのに、今シーズンのようにメジャーのバッターがストレートに差し込まれるようになると、上原のフォームはバッターのタイミングが取りづらいとか、体感速度を速く感じさせるキレがあるんじゃないかとか、理由づけが始まる(だから、キレって何だ?)。

松坂大輔投手(ニューヨーク・メッツ)

 たとえば、ドラゴンズのユニフォームを30年も着続けている稀有なフランチャイズ・プレイヤー、山本 昌のストレートは入団時から130キロ台で、あの程度のまっすぐがプロで通用するはずがないと入団当初はさんざん酷評された。しかし、今や「山本 昌のストレートは135キロのときがもっとも速く見える」という見方が定説となっている(最初にそう言い出したのは、究極の二番手捕手、ドラゴンズの小田 幸平だ)。
 それは、彼の135キロのストレートが実際、バッターに打たれないからに他ならない。

 そこで、松坂 大輔である。
 今シーズン途中、クリーブランド・インディアンズとのマイナー契約を破棄。フリーエージェントとなった松坂に声を掛けたのは、メッツだった。ローテーション投手が相次いでケガで戦列を離れ、とはいえマイナーのプロスペクトにも無理をさせたくない状況もあって、格安の条件でローテーションを埋めてくれる松坂の存在はメッツにとってはうってつけだったのだ(松坂にとっても今のメッツは来年へのアピールにうってつけのチームだったのだが)。

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