石田雄太の斜説

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第6回 松坂大輔の現在地2013年11月05日

 松坂がこう言っていたことがある。
「そりゃ、日本と同じ形で投げられるのがベストだですけど、マウンドの固さもボールも違うメジャーでは同じようには投げられない。アメリカのマウンドの硬さを敏感に感じてしまって、下に負荷がかかるんです。だからといって、かばって楽をするわけにはいかない。もちろん過剰な負荷がかかるのもよくない。負荷をかけずに下半身を使う投げ方を探しているうちに、重心が高くなってしまいました。そうすると今度は上半身に負担がかかる。だったら筋力をつけなきゃと思って、体を大きくした。あの手投げはどうなのとか、体がでかすぎるんじゃないかとか、そうやって言う人がいましたけど、何のためにそうしているのか、そこには理由があるんです」

 松坂は、ずっとメジャーの硬いマウンドでも負荷のかからない、それでいてそれなりの負荷を掛ける下半身の使い方を模索してきた。足の上げ方、重心の置き方、左足の使い方を緻密に組み直し、股関節をやわらかく使ったスムースな体重移動を可能にする下半身の使い方。まずはそこを見直して、次に上半身の使い方を組み合わせる。右腕をちゃんと振き切れるよう、左手の使い方を見直し、小手先で右腕、左腕の位置を微調整しないよう、上体全体をどう使うかということに腐心する。イメージは左腕を引くのではなく、左胸をグラブにぶつける感じ。そうすることで体重も前に乗り、右腕もしっかり振れる。

 一見すればストレートのスピードが落ち、アウトローへの正確なコントロールがあるわけでもなく、絶対的な変化球を武器にしているわけでもないように見える。しかし、根本的な改造をするのに、時間がかかるのは当たり前だ。今のところ見映えはしなくとも、もう一度、メジャーの舞台に当たり前のように立つために、ここまでの彼が目指してきた方向性は間違っていなかったと思う。松坂はこうも言っていた。
「こっちに来て、なかなか思うようなボールが投げられないと思いながら、何年も過ぎてしまいました。技術的なこともあったし、肩とかヒジを含めた身体のこともあったと思います。正直、メジャーに来て、イメージ通りのボールをレベルの高いバッターに打ち返される想像はしてましたけど、自分のボールがイメージ通りに投げられないということは想像しませんでしたからね。新しい自分を作り直すには、正直、スプリングトレーニングだけでは時間が足りないんです。オフから取り組んできても間に合わない。そうなると、どうしてもシーズンの中でやっていかなければならないということになる。それは、ホントに難しいことです。そういう意味では手術をしたことで、プロに入って初めて時間をもらったのかなと考えました。野球のことを考える時間も、実際に新しいことに取り組む時間も、たっぷりありましたからね」

 フォームを見直し、体を作り直して、ピッチャーとしてリフレッシュする。
 ヒジが癒えるのを待つと同時に、松坂はこれまでに溜まってしまった垢を落とすことにも取り組んだ。
 初めてキャッチボールをしたのは、手術から4ヶ月が経過した去年の10月3日。今年の3月には、自分の体に新たな意識を植えつけるために、敢えて極端なフォームで投げ始めた。その不格好なフォームを見られたくなくて、カメラを避けた。一ヶ月の間、とにかく人目を避けてフォーム固めに没頭した。それでも、望んだ答えはすぐに出ない。

「手術の前に、肩、ヒジの痛みが出ないようにと投げてきた悪いクセがたまに出てしまうことがあるんです。不意にヒジを下げて投げてしまったりとか、チェンジアップを投げるときにコースを突こうとするとヒジがこわばっちゃったり、どこかでかばう動きが出てしまう。自分の中ではもう痛みはないんだからと、キャッチボールから意識するようにはしてるんですけど……ここ数年、いろんな経験をさせてきてもらってて、もう、どういうことが起きてもビックリしなくなりました(苦笑)。いろいろなものが見えてくるし、いろいろなことがわかってくるので、今ではどんなことでも素直に受け入れられる自分がいる気がします」

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