欧州野球紀行

印刷する このエントリーをはてなブックマークに追加   

第2回 韓国の高校野球事情 【韓国野球が熱い理由】2013年07月27日

【目次】
[1]高校野球ブームに火をつけた在日韓国人
[2]少数エリート主義の高校野球
[3]高校野球のマイナーリーグ化

高校野球のマイナーリーグ化


 高校野球をこのままにしておけない、という考えは、大韓野球協会も学校現場も一致していた。そのための改革としてまず行われたのは、週末リーグ制である。
 これは、野球部員も平日は授業に出て勉強することを前提に、全国大会は週末や休日、休暇中に限定し、普段は全国を8ブロックに分け、近隣のチーム同士で週末リーグを行うというもの。これに伴って、全国大会は青龍旗、黄金獅子旗、大統領杯それに国体だけになり、在日チームも出場した鳳凰大旗や地方都市開催の大会は廃止された。

 こうした週末リーグ制は、運動選手も勉強するべきだという世論を受けて、野球の他にもサッカーなどで実施されている。ただ、小学生の頃から運動に専念していた生徒が、新制度に適応するのは難しい。それに勉強をするよりも、スポーツの方に集中して欲しいと考える親も多い。そこには、韓国の特殊事情がある。
 日本の高校野球の監督は、学校の教師であることが多いが、韓国では、教師が指導するケースは、ほとんどない。監督の大半は、野球部に雇われたプロ経験者などである。しかも、監督、コーチらの人件費の大半は、選手の親が負担している

 韓国では、一般生徒から運動部活動の助成金などを徴収することは原則として禁止されている。学校を運営する財団や校友会などが支援する場合もあるが、親の負担はどうしても重くなる。そのため親は、もっと練習して、負担に見合った結果を求める思いが強くなっている。

 またプロとの関係も、日本とは違う。韓国では以前から、プロ出身者も高校生を指導できる。またプロ野球のチームは、フランチャイズ地域の高校を支援してきた。それは、フランチャイズ地域の高校生(出身者を含む)を優先的に指名できる制度があったからだ。

木洞野球場

 ところが、2009年からは優先指名方式を廃止し、全選手を通常のドラフトで指名するようになった。その結果プロからの支援が途切れ、高校チームの懐が苦しくなった。

 そのため4月には、56校を地域ごとに10のグループに分け、それを2年後の参入を目指し、今年から選手集めを始めるKTを含め、プロの10球団がそれぞれ支援することを決めた。その代わりドラフト制度を改め、支援する高校の中から1人をドラフト会議の前に、優先指名するという方式になった。

 これは高校野球が、プロのマイナーリーグ化することを意味する。けれども、韓国の野球関係者は、「そうしないと、韓国の高校野球は成り立たなくなる」と、諦め顔だ。
 さらに7月16日は、2年前に廃止されたばかりの鳳凰大旗の大会が復活することが発表された。 予選なしに全高校チームが出場するこの大会がなくなったことで、大学進学のための資格を得る機会が減少したこと、それに全国大会に出ないことにより、校友会などからの寄付が集まりにくくなったことなどが、その理由だ。


 高校野球が、プロ入りや大学進学、さらには学校を宣伝するための手段であることを、より鮮明にしたことになる。高校野球が枯渇すれば、プロ野球も成り立たなくなる。その危機意識からくる対応策であるが、高校野球人気につながるとは思えない。

  もっともプロ入り、大学進学、学校の宣伝といった側面は、日本の高校野球にもある。韓国の現状をみれば、高校野球の理念や精神の重要さを再認識させられる。

 なお、韓国の高校で現役プロ選手を最も多く輩出しているのは、光州一高校(28人)だ。中日でプレーした宣銅烈(ソン・ドンヨル)、李鍾範(イ・ジョンボム)も、この学校の出身だ。オリックスの李大浩(イ・デホ)の母校である釜山の慶南高校、元千葉ロッテで、現ハンファの金泰均(キム・テギュン)の母校である天安北一高校も韓国の高校野球を代表する強豪である。
 高校野球の試合では、メジャーリーグのスカウトの姿もよく見かける。韓国の高校野球は、人気は落ち込んではいるものの、粗削りだけれども、可能性を秘めた原石を見ることができる。

(文=大島裕史)

このページのトップへ


【関連記事】
第35回 ロッテの大型新人・井上晴哉が練習試合で本塁打!開幕5番候補に【Weekly TOP5】
第34回 デレク・ジーターが今季限りで引退【Weekly TOP5】
第3回 韓国プロ野球の今 【韓国野球が熱い理由】【アジア野球】
第1回 盛り上がる韓国のプロ野球 【韓国野球が熱い理由】 【アジア野球】

コメントを投稿する

コラム