第11回 【イラン野球の素顔】「独特の文化によって形成されたイラン野球とは?」(前編)2015年06月23日
【目次】
[1]元イラン代表監督の色川冬馬氏の野球人生
[2]見えてきたイラン野球とイラン人の特質
[3]イラン野球の発展を妨げている要因とは
イラン野球の発展を妨げている要因とは

西アジアカップ
「イラン人は、実は保守的なんです。ミーティングを行うと、6時間くらい話し合い、素晴らしいビジョンを描くことができるのですが、それが実行されることはありません。失敗を恐れていて、責任を取ることを嫌っているからです」
そして時間にルーズという一面も持つ。イラン人のルーズなところは野球にもつながっており、チームプレーができない選手が多いのだとか。協会が発展するための方法として色川さんは、お金が回るシステムを構築することを提案している。
「お金が絡めば、責任逃れはできなくなり、描いたビジョンを実現するまで動くと思うんです」
その通りだ。日本の野球がここまで発展したのは、関係者の熱い思いだけではない。多くの人の時間、資金が関わっているからこそ、『なんとか発展したい』という思いをみんなが共有し、責任を持って遂行したことで、今があるのだ。しかし、国が違えば、同じようには上手くいかない。イラン人の人間性の一因には、イスラム教が関わっていると説明する。
「イラン人には二面性があります。戒律が厳しく、多くのタブーがありますよね。
パブリックな場面では順守していますが、プライベートでは守っているかは分かりません。それがばれてはいけないので、秘密にしておく。都合が悪いことを隠す性格が多くの場でみられます。
イラン人は交渉がうまいと言われますが、自分の本心を表さない怖さがあるんです。代表監督になる時も、実は別の候補者がいて、僕は対立候補だったのですが、ものすごいバッシングを受けました。監督に就任するためのプロセスとしては、代表合宿を行い、そこで結果を出せば監督になれるということだったのです。僕はその合宿を成功させて、監督に就任しましたが、就任した途端、バッシングをしていた人たちが手のひらを反して歩み寄ってきました。なので、コーチなどは、本当の意味での人間性を見抜かないといけません。そういう部分を分かった上で、コミュニケーションをとらないといけませんね」
二面性と保守的な面。これがイラン野球の発展を妨げている一つの要因でもあった。なかなか深い問題のようだ。【後編へ続く】
前編では、色川 冬馬さんの学生時代に身に付いた独自の野球観や、イラン野球に関わるようになったきっかけ、そして苦労などを、色川さんの野球人生を振り返りながら紹介した。後編では、イラン野球が抱えている課題について伺います!
(インタビュー・河嶋 宗一)

- 編集長 河嶋 宗一
- 出身地:千葉県
- ■ 現場第一主義。球児に届けたい情報とあれば日本だけでなく海外まで飛び回る。
- ■ 編集長であり、ドットコムのスカウト部長と呼ばれ、日本全国の隠れた名選手を探索。
- ■ 幅広いアンテナと鋭い観察力でダイヤの原石を見つけだす。
- ■ 編集部の理論派として、今日も球場に足を運ぶ。
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