第4回 野村 謙二郎氏が語る「世界野球の奥深さ」(前編) 日本と世界のスタイルの違い2016年02月03日

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【目次】
[1] 日米大学野球・ソウル五輪で受けた世界野球の印象
[2] MLBへの想いと海外自主トレで学んだこと
[3] 日本と世界の「スタイル」差を理解し、活かす

日本と世界の「スタイル」差を理解し、活かす

2013年の広島監督時代・社会人オール広島戦前に伯和ビクトリーズ原口 翔(昨年まで香川OG)のスイングを見つめる野村 謙二郎氏

――臨時コーチの立場として野村さんが特に感じられたことはありますか?一般の人はシーズンでの姿を目にするわけですが、スプリングキャンプに参加されるとまた印象が違うと思います。

野村 キャンプのあり方、最新のトレーニング、最新の野球フォーメーション、投手起用の仕方など、日本にやってくるまでに時間がかかるものをここで仕入れられる一方で、キャンプで一番感じたことは「練習しないな」と。

――「練習しない」?

野村 日本人はキャンプで鍛え上げて一年間戦える体力や気力を養う。それが日本でのキャンプのスタイルなわけですが、アメリカでのキャンプはあくまでも「シーズンが始まるまでの準備期間」。だから、家族を連れてきている選手もいますし、朝は早く球場へ行ってウエイトトレーニングをして、一緒に練習をしてお昼12時には上がり。

 それが2~3週間続いた後、3月は1日ないし2日の休みを除いてずっと試合です。これがアメリカのスタイルでした。そこで僕は「もっと練習すればうまくなるのに」と思うのと同時に、「彼らは子どものころからこのスタイルでやってきているので、アメリカ人の選手に日本のスタイルを押し付けるのは無理だな」と感じました。
逆に日本でキャンプを「シーズンまでの準備期間」としてしまうのも文化の違いがあり、戸惑いが出て受け入れられないと思います。徐々には変わってくるとは思いますけど。

――昔から広島東洋カープのキャンプは「ものすごい練習量」という話もありますし。

野村 みなさんにそう言われるんですが、僕は現役時代カープでしかやっていなかったので。解説の仕事で他球団のキャンプを見に行っても「ここと比べてやっていたかな」と思いますね。
ただ、カープのキャンプは効率がすごくいい。そこはキツイかもしれないです。他球団であれば打撃練習でゲージを設定するときには全員で休みますが、カープの場合はゲージをセッティングしている時でも誰かはグラウンドにいる。それが「練習する」と捉えられているかもしれないですね。

――アメリカキャンプの話に戻すと、ここで学ばれたことが後に2010年から5年間、広島東洋カープの監督に就任されていた際、外国人選手への接し方に活きたわけですよね?

野村 そうですね。さらに言えば今は日本の野球レベルが上がってきています。ですから昔はどの球団も外国人選手は「助っ人」という言い方をしていましたが、今はどちらかと言うと「助っ人」よりも「足らない部分を補っている」感覚の方が強い。
ということで外国人選手に対しては「助っ人」の感覚を外して、キャンプのスタイルの違いなど受け入れられない部分を理解して、どうするか。「飢えさせる」ということです。

 もし成績が悪ければ日本であれ他の国であれやることは同じ。ここで何かのせいにしているようは絶対に上がってこない。そこで全体練習が休みの時に「個人練習に参加させてくれ」といったタイミングで、僕がマンツーマンで投げて冗談を交えながら修正点を指摘したりするんです。
これがエルドレッドやキラに対しては彼らがそういう考えを持ってくれたこともあってうまくはまって、彼らは成績を残してくれました。バリントンにしてもよく練習する選手でしたし。

 技術がよくてもメンタル的に弱い選手がいるので人間観察は必要。これはロイヤルズに4年間行って色々な国の選手やタイプを見てきた中で、最も学んだこと。まず自分の中で「タイプのグループ分け」をして、「この選手はもう少し言った方がいいな」とかを接する中で決めていく。そんなことが自然にできるようになりました。

 後編では2015年に再び訪れたMLBキャンプの話と昨年7月に訪問したスリランカの話を中心に。世界における日本野球の役割についても語って頂きます。

(文・寺下 友徳

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プロフィール

寺下友徳
寺下 友徳
  • 生年月日:1971年12月17日
  • 出身地:福井県生まれの東京都東村山市育ち
  • ■ 経歴
    國學院大學久我山高→亜細亜大。
    幼稚園、小学校では身長順で並ぶと常に一番後ろ。ただし、自他共に認める運動音痴から小学校入学時、早々に競技生活を断念。その後は大好きなスポーツに側面から関わることを志し、大学では応援指導部で4年間研鑽を積む。亜細亜大卒業後はファーストフード販売業に始まり、ビルメンテナンス営業からフリーターへと波乱万丈の人生を送っていたが、04年10月にサッカーを通じて知り合った編集者からのアドバイスをきっかけに晴れてフリーライター業に転進。07年2月からは埼玉県所沢市から愛媛県松山市へと居を移し、現在は四国地域を中心としたスポーツを追いかける日々を過ごす。
  • ■ 小学校2年時に福岡からやってきた西武ライオンズが野球と出会うきっかけ。小・中学校時代では暇さえあれば足を運んでいた西武球場で、高校では夏の西東京予選の応援で、そして大学では部活のフィールドだった神宮球場で様々な野球を体感。その経験が取材や原稿作成の際に「原体験」となって活きていることを今になってつくづく感じている。
  • ■ 執筆実績
    web上では『ベースボールドットコム』(高校野球ドットコム、社会人野球ドットコム、独立リーグドットコム)、書籍では『ホームラン』、『野球太郎』(いずれも廣済堂出版)、『週刊ベースボール』(ベースボール・マガジン社)など。『甲子園だけが高校野球ではない2』(監修・岩崎夏海、廣済堂出版)でも6話分の取材・文を担当した。

    さらに野球以外でもサッカーでは、デイリースポーツ四国3県(香川・高知・愛媛)版・毎週木曜不定期連載中の『スポーツライター寺下友徳・愛媛一丸奮闘記』をはじめ、「週刊サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画社)、『サッカー批評』、web『スポーツナビ』など多数媒体での執筆実績あり。また、愛媛県を熱くするスポーツ雑誌『EPS(ehime photo sports)』でも取材協力を行っている。
  • ■ ブログ:『寺下友徳の「四国の国からこんにちは」』■twitterアカウント@t_terashita
    ■facebook: http://www.facebook.com/tomonori.terashita

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