第158回 【第47回明治神宮大会】明治大vs桜美林 「星知弥の投打にわたる『救援』で明治大が優勝!」2016年11月16日

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星知弥の投打にわたる「救援」で明治大が優勝!

歓喜の明治大

 明治大の先発・柳 裕也(4年)は明らかに連投の疲れが残っていた。ストレートは最速で137キロどまり、持ち味の縦変化のカーブもいつものキレがなく、1回表の1番山野辺 翔(4年・二塁手)の二塁打から始まり、3番沼田 涼(4年・遊撃手)の三塁打、4番村井 諒(4年・一塁手)のタイムリー、5番大平 達樹(3年・捕手)の右前打と続き、あっという間に2点を先制された。しかし、この日の柳の状態だったらもっと得点できたのではないか、というのが偽らざる思いだった。

 桜美林大の先発・佐々木 千隼(4年)は、序盤は120キロ台のスライダーと130キロ台のシンカーを中心にピッチングを組み立て、明大打線を4回まで1安打に抑えた。ストレートと変化球の比率はどれくらいだろうと2~4回を調べると、50球中、ストレートが15球、変化球が35球だった。これが佐々木のスタイルと言ってもストレートの比率はわずか3割。コーナーを突こうとしすぎたのか4回までの球数は70球を越え、四球3、死球1は明らかに崩れる前兆と思えた。前日の日大戦に投げていないので柳ほど疲労はないはずだが、リーグ戦、横浜市長杯と投げ続けてきた心身の蓄積疲労は柳以上だったかもしれない。

 5回裏、それまで1安打に抑えられていた明大打線は徹底してボール球を見極める待球作戦に出た。実はそれは思ったほど難しい作戦ではなかった。佐々木のコーナーを突こうとする変化球が大きく外れることが多くなったからである。先頭の9番渡辺 佳明からこの回最後の打者になった8番星 知弥まで(9人のうち)初球がボールだった打者は6人。その結果、佐々木がストライクを取りにいった球を明大各打者は難なく捉えることができた。2四球、4安打を集中してあっという間に4点を奪って逆転。8回には柳をリリーフしたヤクルト2位の星知弥(4年)が左中間にアッと驚くソロホームランを放った勝負は決した。

 明大を救ったのはこの星かもしれない。宇都宮工時代から今年まで星のピッチングを何回か見てきたが、この日の星が一番よく見えた。隣にいた苑田 聡彦・広島スカウト統括部長に「星、いいですね」と言うと、「いいねぇ、最後に間に合ったね」と強くうなずいた。

 ストレートは最速152キロに達する迫力で、134、5キロで小さく変化するストレート系の変化球もある。軸足にウエートがたっぷり乗って、テークバック時の体の割れも万全。欲を言えばもう少し内角にきてほしい。投げるときから体が外角のほうを向いているように見えて仕方ない。外の球を生かすならその前提として内角球がほしいーーと、これは老婆心である。

 明大の優勝が決まったあとグラウンドで公開インタビューが行われたが、柳は「チームメートに恵まれました」と言ったあと泣いてしまった。翌日のスポーツ紙には「号泣」という見出しがあったほどだ。以前、創価大の156キロ右腕、田中 正義(ソフトバンク1位)を取材したとき、今まで見たナンバーワン投手は柳、と断言していた。この日投げ合った佐々木も同じことを言っている。田中は「人間性もすごくいいので、自分が野手だったら柳に投げてほしい」とまで言っているが、その言葉が何となく理解できた。

(取材・文=小関 順二


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桜美林大2000000002
明治大00004001X5
桜美林大:佐々木、土井、邑楽―大平
明治大:柳、星―牛島

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プロフィール

小関 順二
小関 順二
  • 出身地:神奈川県横須賀市生まれ。
  • ■ プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。ストップウオッチを使った打者走者の各塁走塁、捕手の二塁スローイングなど各種タイムを紹介したのも初めてで、現在は当たり前のように各種メディアで「1.8秒台の強肩捕手」、「一塁到達3.9秒台の俊足」という表現が使われている。
  • ■ 主な著書に『プロ野球問題だらけの12球団』(年度版・草思社)、『プロ野球スカウティング・レポート』(年度版・廣済堂あかつき)、『ドラフト物語』(廣済堂あかつき)、『野球力』(講談社+α新書)、『プロ野球サムライたち』(文春新書)などがある。
  • ベースボールファン(有料コラム)では、「野球を歩く」を寄稿、野球ファン必見の野球歴史コラムを配信している。 
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