第13回 いよいよMLBキャンプイン!2016シーズンを振り返る【後編】イチローが3000安打達成!そしてA・ロッドが引退」2017年02月13日

【目次】
[1]イチロー3000本安打
[2]グリフィー史上最高の得票率で殿堂入り / ヤンキースがトレード期限に売り手に廻る
[3]A・ロッドがシーズン中に引退 / レッドソックスが左腕セールを獲得してパワーハウスに
2016年MLB10大ストーリーは後編!前編ではカブスの世界一の軌跡を振り返っていきました。後編ではイチロー選手の3000安打など、名選手の引退、大物選手の移籍について迫っていきます。
イチロー3000本安打

イチロー(マーリンズ)
メジャー史上屈指のヒットメーカー、イチローがついにメジャー通算3000本安打を達成した。
あと1本に迫って迎えた8月7日、クアーズフィールドで行われたロッキーズ戦の7回表———。カウント0−2から、左腕クリス・ラシンの真ん中のカッターをイチローのバットが捉えた。あわやホームランかと思われた打球はライトフェンスを直撃。イチローは難なくサードベースに達し、メジャー史上2人目の三塁打で3000本安打に到達した選手になったのだった。
「達成した瞬間にチームメートたちが喜んでくれて、ファンの人たちが喜んでくれた。僕にとって3000という数字よりも、僕が何かをすることで、僕以外の人たちが喜んでくれることが大事だということを再認識した瞬間でした」
試合後のイチローはこの瞬間を彼らしい言葉で振り返ったが、実際にスタジアムはマイルストーンにふさわしい素晴らしい雰囲気になった。
メジャーでも過去29人しか成し遂げていなかった大記録は、殿堂入りの必要条件とも称される。過去に3000本を突破した野手の中で、殿堂入りを果たしていないのは野球賭博と薬物使用でいわくつきになったピート・ローズ、ラファエル・パルメイロ、引退後まだ5年を経過していないデレック・ジーター、現役選手のアレックス・ロドリゲスだけ。この通例を見れば、イチローも“野球人にとっての最高の名誉”と呼ばれる殿堂入りを確実なものにしたことになる。
何より素晴らしいのは、42歳にして、2016年のイチローは立派にマーリンズの戦力としてこの記録に到達したことだろう。2015年のイチローは打率.229という低調な成績に終わった。この年の終盤ごろには、来季の契約をオファーするチームが現れないのではないかと懸念する声すらあった。しかし、2016年は全盛期を思わせるペースで打ちまくり、前半戦終了時の時点でチーム最高の打率.335(規定打席不足)。
マイルストーン到達直前にややペースは落ちたが、それでも3000本達成時の打率は.317とハイレベルだった。キャリア晩年に青息吐息で記録を達成するのではなく、夏場あたりまでプレーオフ争いに残ったマーリンズに貢献した上で、大記録に到達したことの意味は大きい。
様々な意味で、イチローとその周囲のすべての人間にとって、2016年は忘れられないシーズンになったはずである。
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- 杉浦 大介
- ■ 東京都生まれ。
- ■ 日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はMLB、NBA、ボクシングなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『スポーツナビ』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは (http://twitter.com/daisukesugiura)
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