第6回 高校生の即戦力化は進んでいるか ―高卒ルーキーが3年以内に活躍する可能性10.87%― 2013年10月23日

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【目次】
[1]活躍する高卒ルーキーたち
[2]高卒ルーキー 過去20年のデータ
[3]飛躍をとげた高卒ルーキーたち
[4]プロでの活躍が期待されるドラフト候補たち

高卒ルーキー 過去20年のデータ

大谷翔平選手(花巻東時代)

 ここまで見てきたように、高卒でプロに進み、比較的早い時期からめざましい活躍を見せる選手は増えているようである。しかし、視野を高卒ルーキー全体に広げた場合、本当に「高校生の即戦力化は進んでいる」と言えるのだろうか。

 それを検証するために、まずは「即戦力」と呼べる高校生がどのような選手なのかを考えてみたい。

 ご存じの通り、高校卒業後も野球を続ける有力選手たちは、プロ入りする選手と大学に進学する選手に大別される。進学する選手たちは、大学の野球部でみっちり鍛えられ、4年後のプロ入りを目指すわけだが、高卒でプロ入りした選手たちが、その頃すでに1軍で活躍していれば、「即戦力」と見なすことができるのではないだろうか。

 またプロ野球では、年間144試合のうち75勝程度でAクラス入りとなる。では、投手の場合、これにどれだけ貢献できれば、戦力として数えることができるだろうか。たとえば、今年パ・リーグで3位になったロッテの場合、全74勝のうち投手一人当たりの平均勝利数は2.84である。したがって、シーズン3勝を挙げれば、ひとまず「戦力」と考えることができるだろう。

 野手の場合は、守備と打撃に分かれるため一概に数字によって評価できない。しかし、今年セリーグで3位になった広島の場合、野手一人あたりの平均出場試合数は41.77である。このことを考えると、シーズン42試合に出場する選手であれば、「戦力」として数えることができるだろう。

 そこでこのコラムでは、即戦力となる高卒ルーキーについて、以下のように一応の定義づけをしたい。

(1)投手:プロ入り後3年以内に、1軍でシーズン3勝以上
(2)野手:プロ入り後3年以内に、1軍でシーズン42試合以上出場

 その上で、すでに結果の出ている1990年~2009年にドラフトで指名された高卒ルーキーの成績を調査し、5年ごとに20年分のデータを作成した。以下がそのデータである。



 調査の結果、1990年~2009年の間にドラフトで指名された高校生の数は653人。そのうち、実際に入団し即戦力として活躍したのは71人(10.87%)だった。

 さらに、これを5年ごとの4期に分けたうえで、最も数字の良かった1995年~1999年の5年間と、直近の2005年~2009年の5年間を比較。すると、即戦力となった高卒ルーキーの割合は、前者が12.92%だったのに対し、後者は12.22%と0.7%低かったことがわかる。

 では、投手だけのデータを抜き出してみるとどうだろうか。



  ※3年目(93年)に中継ぎとして35試合に登板した渡部高史(横浜ーオリックス)と、2年目に同じく中継ぎとして31試合に登板した高橋一正(ヤクルト)を、例外的に即戦力としてカウントした。

 投手だけのデータを比較した場合、高卒ルーキーが即戦力となった割合は、最も古い1990年~1994年の5年間より、直近の2005年~2009年の5年間の方が3.61%以上高いことがわかる。だが、もっとも数字の良かった1995年~1999年と比較すると、0.85%劣っている。

 さらに、野手だけのデータを比較した場合ではどうだろうか。



 野手だけのデータを見た場合、直近の10年間に高卒でプロ入りした選手の即戦力となった割合は、それ以前の10年間の選手と比べ明らかに劣っている。特に、2000年~2004年の落ち込みは激しく、わずか4.10%の高卒ルーキーしか即戦力となっていないことがわかる。

 このように、あくまで数字の上での分析では、「高校生の即戦力化が進んでいる」とは言えないのである。

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