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第5回 【坂口裕昭の北米探訪記】 ニュージャージー・ジャッカルズ戦 「慣れない環境の克服 ~その先にあるもの~」(第2回)2015年06月14日

慣れない環境で実力を発揮するという能力
海外に行くと必ず立ち寄る場所がある。何も特別な場所ではない。地域のどこにでもある、普通のスーパーマーケットである。店内の雰囲気、陳列されている商品の種類、商品の価格、そして、売場やレジで働く店員。スーパーマーケットは、その土地に暮らす人々の文化を生々しく映し出す鏡であり、その土地を知るのに最適な空間なのである。
今回の北米遠征に参加している四国アイランドリーグplus All Stars(以下「IL選抜」)の選手のうち約6割は、海外に行くこと自体が初めてというメンバー。気候、食事、言葉。慣れない環境に戸惑いながら生活し、その中で、野球に打ち込み、連戦に臨んでいる。もちろん、日々、宿舎近くのスーパーマーケットで買い物もしている。
IL選抜の選手たちには、野球という狭い観点からだけではなく、生活、文化の観点からも、異文化交流を積み重ね、人間として大きく逞しく成長して欲しいと願っている。

試合の様子
北米遠征第2戦の対戦相手は、初戦に続き、ニュージャージー・ジャッカルズ。
結果から言えば、IL選抜は、この日まで9連勝と波に乗る首位ジャッカルズに1-6で敗戦(試合レポート)。北米遠征は、連敗スタートとなった。この試合では好対照な2人の選手に注目したい。一人は松澤裕介(香川オリーブガイナーズ)、もう一人は福永春吾(徳島インディゴソックス)である。
松澤は、この日3安打を放ち、IL選抜として初めての1点を叩き出した。また、2回裏には、左中間の深い位置へ飛んだ強烈な打球に迷わずダイブ。守備でもスーパーキャッチを披露し、スタンドの観客から拍手喝采を浴びた。北米遠征では、ここまでの2試合で7打数4安打1打点。輝きを放っている。
松澤は、香川オリーブガイナーズに入団して1年目の22歳。香川の前期優勝にも多大なる貢献をした強打の外野手である。私自身、2014年11月に関西で行われたトライアウトで松澤を見ているが、その面構えやハツラツとした動きは今でも瞼に焼き付いている。香川への入団が内定していたため獲得することはできなかったが、そうでなければ、間違いなく徳島インディゴソックスが上位指名していたであろう。
私は、北米遠征初戦が終了し、深夜に一人、宿舎のロビーでメジャーリーグの試合の録画映像に見入っていた松澤に声を掛けた。「今回の遠征メンバーに選ばれて本当に感謝している。実際、アメリカに来て、何もかもが本当に勉強になる。慣れない食事や時差ボケにもしっかり順応できているし、とても充実している」と目を輝かせていた。礼儀正しく、快活な好青年は、慣れない環境を、むしろ楽しみながら伸び伸びとプレーしている。
慣れない環境で実力を発揮するということ、それ自体も、一つの重要な能力である。
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