第8回 【坂口裕昭の北米探訪記】 「やまない雨はない」 (第4回)2015年06月17日

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坂口裕昭の北米探訪記

サセックスカウンティー・マイナーズとの3連戦の初戦、雨天中止

サセックスカウンティー・マイナーズのゼネラル・マネージャー、デイヴ・チェイス氏と

 スカイランズ・スタジアムは、雨に濡れていた。ニュージャージー州サセックス郡オーガスタ。牧歌的な風景が広がるこの一帯では、分厚い雨雲と強い日差しが交互に顔を出す不安定な天候が続いていた。

 試合開始2時間前の午後5時。内野の全てを覆う巨大なシートには水がたまり、プールにしか見えない。それでも、晴れ間が覗くと、シートを外し、ボランティアスタッフによる懸命の復旧作業が始まる。しかし、自然というものは時に残酷である。再び強い雨に容赦なく襲われたグラウンドは、もはや、復旧のしようがなかった。そして、試合開始予定時刻の午後7時。四国アイランドリーグplus All Stars(以下「IL選抜」)とサセックスカウンティー・マイナーズとの3連戦の初戦は、中止になることが決まった。

 グラウンドには、雨に打たれて肩を落とすデイヴ・チェイスの姿があった。マイナーズのゼネラル・マネージャーであるデイヴは、チーム編成だけでなく、スタジアム運営や営業マネジメントも統括するチームの大黒柱。アメリカ野球界の運営サイドの裏方として35年以上の経験を積み、マイナーリーグや独立リーグで数々の実績を残してきた大ベテランである。

 2015年4月、デイヴは、スカイランズ・スタジアムを視察に訪れた私たち四国アイランドリーグplus(以下「四国IL」)の経営陣を、手放しで歓迎してくれた。
「IL選抜との試合のチケットが爆発的に売れていて、問い合わせが後を絶たないのだよ。3連戦に合わせて日本のビールを仕入れて沢山売るよ。」
興奮を抑えきれずに、デイヴは、満面の笑みを浮かべ、ユーモアを交えながら愉快そうに話していた。

 しかし、それから2か月が経った今、デイヴの表情は冴えない。
私には、デイヴの気持ちが痛いほどわかる。デイヴは、売り上げや観客動員の観点から、IL選抜との3連戦をシーズンのハイライトの一つに位置付け、準備を重ねていたに違いない。

 四国ILでも同じであるが、試合が始まった後の中止を判断する責任者は審判であり、試合が始まる前の中止を判断する責任者はホストチームの長である。ホームゲームが開催される時は、週間天気予報のチェックに始まり、3日前予報、前日予報、当日予報と試合直前まで天気図の確認に追われる。

 雨の中、スタジアムに足を運んで頂いたお客さまを失望させてはいけない。売り上げや観客動員のことも考えなくてはいけない。期間内にスケジュールも消化しなければいけない。逆に、無理に試合をすることで選手たちに怪我をさせてはいけない。お客さまに風邪をひかせるわけにもいかない。お客さまの帰りの交通機関のことも考えなくてはいけない。周囲からの猛烈なプレッシャーの中、あらゆる考慮を重ね、短時間でバランスの取れた決断を迫られるのである。


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