第8回 【坂口裕昭の北米探訪記】 「やまない雨はない」 (第4回)2015年06月17日

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野球大国アメリカの現実

スカイランズ・スタジアムの内野の全てを覆う巨大なシート

 私自身、雨天中止の判断に悩まされた経験は数え切れないが、中でも2013年10月5日、年間総合優勝がかかった香川オリーブガイナーズとの一戦のことは一生忘れることができない。
試合開始1時間前、記録的な豪雨に見舞われてグラウンド全体が水浸しになったのだ。雨の中、グラウンドに出て、スタンドを振り返ると、すでに沢山のお客さまが入っている。これは、やるしかない。天気図を見て、その後、雨が降ることはないと判断し、周囲に中止のムードが漂う中、試合を決行することにした。徳島の選手はもとより、香川の選手、リーグのスタッフ、とにかく、その場にいた関係者全員の力を借りてグラウンドを整備し、予定より1時間20分遅れで試合を開始した。

 結局、この試合で徳島は優勝を決めたが、試合中は、お客さまの様子や選手の怪我が気になって仕方がなかった。また、対戦相手の香川にも申し訳ないことをしてしまったかもしれないと、試合が終わった後も、その判断が正しかったのかどうか、結論を出すことはできなかった。
いずれにせよ、雨天中止の判断というものは、どちらの決断をするにせよ、すっきりとしないものが残るし、批判を浴びることにもなるのである。

 デイヴの表情を暗くさせている要因は、この日の試合を中止にせざるを得なかったことだけではないはずである。
マイナーズは、2015年に新設された新しいチームである。サセックス郡には、かつて、マイナーリーグのチームが本拠地を置いていたが、撤退を余儀なくされ、その後、長らくプロ野球の球団は存在しなかった。そのため、地元の渇望感は深く、マイナーズは、大きな期待感をもって迎えられていた。
にもかかわらず、マイナーズは、現在、カナディアン・アメリカン・リーグで6勝12敗と最下位に沈み、1試合あたりの観客動員数も1,723人で6球団中5位と低迷している。スタジアムの広告スペースにも空白が目立つし、球場内に建設が予定されていたレストランの工事も止まっている。

 アメリカは野球大国であり、スポーツ文化が深く根付いている。しかし、それでも、ちょっとした判断の間違いやどうにもならない外的要因によって、球団経営が窮地に陥ることはある。実際、マイナーリーグでも独立リーグでも、球団が消滅することはあるし、リーグの再編成が繰り返されることも珍しくない。
これが、現実である。アメリカの野球興行やスポーツ文化を盲信的に崇拝しても、何も生まれない。同じものは同じ。違うものは違う。冷静に現実を見据え、取り入れることができるものは先入観なくポジティヴに取り入れていく。これが重要である。同じことは、いまIL選抜のメンバーとして経験を重ねている選手たちにも言えることであろう。

 何はともあれ、やまない雨はない。明日には、デイヴの顔に太陽のような笑顔が戻ることを祈っている。同じ立場の同志として。

(取材/文=坂口 裕昭)

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