第1回 超一流〜橋本将と河原純一が愛媛マンダリンパイレーツに与えるもの(前編)2012年05月03日
超一流選手──選ばれた者が日々闘いを繰り広げるNPBでも「心・技・体」を究め、実績を残した者にのみ与えられる栄誉である。その一方、NPBを目指す選手たちが超一流の登竜門を目指し、日々鍛錬に励む独立リーグ。これまで独立リーガーにとって「超一流選手」は当然ながら最も縁遠く、憧れの存在であった。
が今季、四国アイランドリーグplus所属・愛媛マンダリンパイレーツ(以下、愛媛MP)には橋本将(捕手・宇和島東高→千葉ロッテ→横浜)と河原純一(投手・川崎北高→駒沢大→巨人→埼玉西武→中日)が現役選手として入団。その時、彼らにとって超一流選手はTVの向こうから、身近な存在へと変わった。
では、「超一流」は愛媛MP、そして四国アイランドリーグplus、そして独立リーグにどんな化学変化をもたらそうとしているのか?第1回ではこのサプライズに至った経緯を中心に開幕までの動きを紹介する。
愛媛MP「リーグ制覇」への執念から生まれた「橋本将入団」

2月28日・薬師神漬社長と共に入団記者会見に臨む橋本将
2月9日、愛媛MPから流されたニュースリリース。そこには目を疑う見出しが並んでいた。
『NPB復帰を目指して!「元横浜ベイスターズの橋本選手」故郷の愛媛MPに入団!』
確かに前兆はあった。たとえば1月30日に全選手、スタッフが集い愛媛護国神社で行われた必勝祈願の際も、球団関係者からは「まだサプライズはあります」との発言がなされていたからだ。さらにそこには明確な理由も存在した。
リーグ創設8年目を迎えた四国アイランドリーグPlus4球団の中で唯一リーグ総合制覇がない愛媛MP。2010年より愛媛県及び県内全20市町からも出資を受ける「愛媛県民球団株式会社」としての使命でもある2013年の単年度黒字を達成する起爆剤として、チームは今季チーム目標に「年間総合優勝」を明確に掲げていた。
ただし、掲げるだけでは目標は達成できない。今季も社会人野球・大学野球の主力級を獲得した香川オリーブガイナーズ(以下、香川OG)。昨年年間王者、今季も安定した投手陣を有する徳島インディゴソックス(以下、徳島IS)。阪神、横浜、巨人でコーチ業を歴任。2006年ワールドベースボ-ルクラシック(WBC)外野守備走塁コーチの弘田澄男氏を総合コーチに招聘するなど、豪華指導陣をそろえた高知ファイティングドッグス(高知FD)。愛媛MPが他3チームを超えるためには、どうしても即戦力が必要だったのである。

徳島ISとの開幕戦、打席へ向かう橋本将
2年目を迎える星野おさむ監督(元阪神→大阪近鉄→東北楽天→東北楽天コーチ)も「ファンが何を望んでいるのかを考えたとき、育成の段階を踏む中でも優勝とセットでいかないといけない」と至上命題達成を自覚する中、チームが悲願をより近くに引き寄せようとすれば、彼らが「NPB経験者補強」に動くのはいわば必然である。
しかし、その切り札が地元・宇和島東高校出身の35歳、昨年は腰痛の影響で一軍昇格がなかったとはいえ、2005年・千葉ロッテでは強打と強気のリードで31年ぶりパ・リーグ優勝、日本一、そして初代アジア王者獲得。里崎智也との両輪として千葉の顔となり、2009年にはFAで横浜への移籍を果たした橋本将とは。ただただ驚きであった。
一方、愛媛MPにとっては「超一流地元選手」かつ「昨年の弱点だった」捕手の条件をすべて満たすことから、「1月の自主トレ時期から接触し、上京もして熱い想いを伝えてていた」(薬師神績代表取締役)ラブコールが実った形。当然、その夜の地元マスコミ全局は「橋本・愛媛MP入団」をスポーツニュースですべて紹介した。
こうして昨年の小林憲幸(元千葉ロッテ育成)以来、愛媛MP球団史上2人目となるNPB出身・愛媛MP所属選手となった橋本。ただ、このサプライズは「第一弾」に過ぎなかったのである……。
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