第6回 アメリカ独立リーグの現実:苦境に立たされる弱小リーグ(上)2014年02月06日

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アメリカ独立リーグの現実:苦境に立たされる弱小リーグ(前編)

【目次】
[1]アリゾナの落日
[2]苦境脱出の打開策:交流戦による広域化
[3]離合集散を繰り返す独立リーグ

アリゾナの落日

 若い女性による国歌斉唱。両軍ベンチの前には脱帽の上敬礼したユニフォーム姿が並ぶ。おなじみのアメリカプロ野球の試合開始前のセレモニーだ。

 しかし、スタンドにはほとんどファンの姿がない。サッカーではペナルティとして無観客試合が課せられることがあるが、野球の世界、それもマイナーリーグの試合ではそのようなことは聞いたことがない。今一度スタンドを見つめ数えたところ、午後7時の試合開始時に席についていた観客はたった13人。その後、5回終了までに2人しか増えなかった。

 「ピオリアでは、もう少し、200~300人入るんだけどね」
 リーグのビジネス開発ディレクターのチャド・ラザフォード氏はフィールドを見つめ無表情につぶやいた。

 1万人分の座席をもつ、MLBクリーブランド・インディアンズとシンシナティ・レッズのスプリング・トレーニングのメイン球場、グッドイヤー・ボールパークという立派な器にはあまりにもさびしい風景が、目の前にはあった。

 これがアメリカプロ野球のひとつの現実である。1993年に復活したアメリカ独立リーグ。とかく華やいだボールパークばかりが我々に伝えられ、観客動員に苦しむ日本のそれと比較されることが多いが、実際には成功例ばかりではない。
 今やメジャー15球団がスプリング・トレーニングを張る春の野球のメッカ、アリゾナ。アメリカというより世界最新鋭、かつ最高の野球施設を誇るこの地だが、せっかくメイン球場も、まともに使用するのは3月のみである。メイン球場が有料の観客を入れて稼働するのは、このあとはマイナーリーグの公式戦が終了した秋にメジャー球団傘下のファームチームの有望株を集めて行われるフォールリーグの期間だけである。
 このせっかくの施設を、野球の裾野を広げ、埋もれた才能を発掘するために利用しない手はないと、ノースダコタ州の農業ビジネスの大立者であるティム・グロスと地元スコッツデールで野球学校を経営している自称元マイナーリーガーのジョー・スピールが2012年に立ち上げたのが、このフリーダム・プロ・リーグである。

 州都フェニックス周辺にフランチャイズを置く4チームの監督には元メジャーリーガーも招聘、かつてヤクルト、阪神でプレーしたデーブ・ヒルトンも名を連ねた。
 MLBのドラフトから漏れた若者に夢を与えようと、各チームのロースターには27歳までという年齢制限がかけられ、全22人の内、プロ経験者は半数の11人以下とし、逆にルーキーは各球団11人登録することを義務付けたルールは、このリーグがMLBを目指すアマチュア選手のためにあることを示している。
 この理念のもと、春のキャンプからフォールリーグとの間の空白期間を埋め、施設の有効利用とアリゾナにおける野球の活性化を目論んだが、現実は厳しかった。
 「空白期間」と言っても、それはメジャーキャンプのメイン球場だけの話で、メイン球場の周囲を取り囲むかたちでいくつも広がるサブグラウンドは、4月以降もマイナー選手による延長キャンプとそれに続くルーキリーグの公式戦に利用されている。

グッドイヤーのサブ球場施設(この整った施設でメジャーのスカウトが発掘した「金の卵」が連日公式戦をこなす)

 なによりも、アリゾナの野球ファンの目は、4月になれば、地元のメジャー球団、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに向くことになる。このあたり、このリーグを取り巻く状況は、活動エリアにNPB屈指の人気チームである阪神タイガースを擁する関西独立リーグと酷似している。
キャンプで各メジャー球団が使用するフェニックス郊外にある立派な球場には、トップチームが試合を行なうからこそ、そのアクセスの悪さにも関わらず多くの人が足を運ぶのであり、フェニックス市街にあるボールバークでメジャーの試合を観ることができる季節に、技量のない選手のプレーをわざわざ車を飛ばして観に行こうというファンは多くはなかった。

 結局、初年度の決算は100万ドル(約1億円)の大赤字に終わり、リーグが保有していた各球団を地元資産家に売却する目論みも6球団への拡張計画も頓挫したまま、このリーグは2年目を迎えることになったが、その結果は、冒頭で示したとおり、よくぞこれでシーズンを終えることができたなと思えるようなものであった。

 このような現実は、どうしても観客減に苦しむ日本の独立リーグをとりまく状況とオーバーラップしてしまう。

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