第6回 アメリカ独立リーグの現実:苦境に立たされる弱小リーグ(上)2014年02月06日

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【目次】
[1]アリゾナの落日
[2]苦境脱出の打開策:交流戦による広域化
[3]離合集散を繰り返す独立リーグ

苦境脱出の打開策:交流戦による広域化

 昨年より日本のBCリーグはアメリカ独立リーグとの本格的な交流戦を始めた。このことは、実はアメリカ独立球界の動向と大きくかかわっている。
 フリーダム・リーグ当局は、先述のような危機的状況に対し、新たな手を打った。カリフォルニアとハワイに新たに発足した独立リーグ、パシフィック・アソシエーションと交流戦を組み込むことで、対戦相手を増やし、リーグ戦にバリエーションを加えようとしたのだ。BCリーグの交流戦の相手もパシフィック・アソシエーションである。この新興リーグもまた、アメリカ独立球界にあって、苦境に立たされているリーグであると言ってよい。つまり、日本との提携は、観客動員に苦しむ新興独立リーグが生き残りをかけて行った新機軸の延長線上にあるのだ。

 しかし、現実は厳しかった。この打開策も観客動員には決して結びついていないようである。
 このような独立リーグの交流戦は、一方で遠征費というリスクを伴う。これを軽減するためか、フリーダム・リーグは、ハワイには遠征せず、パシフィック・アソシエーションの2チームがフランチャイズを置いているサンフランシスコ郊外のバレーホ、サンラファエルのみに遠征するスケジュールを組んだ。

 一方のパシフィック・アソシエーション側は、当初ハワイの球団も含めてアリゾナへ遠征するスケジュールを組んだ。しかし、直前になって、ハワイの2チーム、マウイ・イカイカとハワイ・スターズは8月末の遠征をキャンセルした。
 その結果、両リーグのシーズン終盤のスケジュールは、大幅な変更を余儀なくされ、ともに8月末にレギュラーシーズンの順位に応じて全チームが参加するトーナメント方式のプレーオフを行なってお茶を濁すという、観客にとっても、現場にとってもなんとも納得のいき難い方法で、なんとかシーズンの幕を下ろすことになった。

パシフィック・アソシエーション、ハワイの2球団のオーナー、ロバートヤング氏。遠征にも帯同し、ラジオ放送で解説もこなすなど、ハワイにおける独立リーグ振興に心血を注いでいる。

 パシフィック・アソシエーションのプレーオフは、一番観客の見込めるレギュラーシーズン首位のサンラファエルの球場で、レギュラーシーズン2位のマウイ・イカイカ対3位のバレーホ・アドミナルズの第1試合の後、その勝者のマウイと地元パシフィックスによる決勝を行なうという形で行われた。ここでマウイとハワイのもう一つのチーム、スターズの両球団のオーナーであるロバート・ヤングにアリゾナ遠征の中止について話を聞いた。

 野球の話になるといつもは饒舌な彼の口調はこの時ばかりはなめらかではなかった。ヤングはこの質問に対して、「リーグ内の別の球団の事情」という理由以上のことは言わなかった。この彼の態度から、現実はハワイ球団の財政事情が遠征中止に大きく影響していたことは間違いないことがうかがえた。

 パシフィック・アソシエーションの各球団も決して潤沢な資金をもっているわけではない。回収の見込みのない事業に少ない資金を投入しようとしないのは、企業家として当然のことである。「今後のハワイ野球のため」と、ヤングの日本遠征にかける情熱にはなみなみならぬものがある。実際、昨年実施した非公式戦扱いの交流戦では、日本側は多くの広告収入を集めたという。ハワイ側にとっても、BCリーグとの交流戦は、有効なコンテンツと映ったのだろう。

 しかし、フリーダム・リーグの現状をみるに、このリーグとの交流戦が、ハワイ球団のメリットになるのかと言えば、大いに疑問が残る。さらに言えば、2013年シーズンは、アリゾナのチームはハワイまで来ないのだ。この片務的な条件で、ハワイ側がわざわざアリゾナまで遠征する意義を見出せなかったのも仕方がないと言えば仕方がないだろう。
 彼にとって聞かれたくもないことを聞かれたインタビューの後、「来年も必ず日本へ行くよ」という決意を語るヤングの表情はほころんだ。日本との交流にかけるヤングの情熱は本物のようだった。

 「僕の給料は信じられないくらい安かったですよ。月300ドル。小遣いみたいなもんです。でも、オーナー、日本人が好きなのか、ちょくちょくお小遣いくれるんですよ。何か困ったことはなかって。実際こっちの方がいい収入になりましたね」とは日本の独立リーグからこのチームに参加した日本人選手の言葉である。ヤングは、弱小リーグの生き残りのカギは、交流戦によるリーグの広域化、とりわけ国境を越えた交流にあると考えているようである。

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