第20回 スーシティ・エクスプローラーズ 井野口祐介 選手2013年09月12日

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【目次】
[1]「野球の果て」に身を置く男 / [2]2年目の米独立リーグの生活 / 「3」とにかく上を目指して

2年目の米独立リーグの生活


――井野口選手のスーシティ・エクスプローラーズが参加しているアメリカン・アソシエーションは、北はカナダのウィニペグ、南はメキシコ国境のラレドまでの広範囲にフランチャイズが散らばっている広域リーグです。移動や気候の変化で体調の維持は大変ではないですか?

井野口 このチームは(リーグ展開エリアの)ちょうど真ん中あたりにあるので、遠征は全部バスで。よそは飛行機を使うこともあるかもしれませんけど。カナダのウィニペグまでは8時間かかっていきましたが、さすがにここは涼しかったですね。でも、気候はあまり気になりません。今日は少し寒いんですが、暑くなる時は結構気温が上がりますから。暑い日はテキサス並みに気温が上がる日もあるんですよ。
 確かにテキサスまでは遠いですね。年に1回だけなんですが、20時間以上バスに乗りっぱなしって感じですから。遠いところへの遠征の場合はオフが挟まるんですけど。テキサスの場合は、遠征の前後に1日ずつ入りますね。そのオフの日の昼に出発して、試合日の昼にホテルに到着、そこで少し仮眠をとって球場に向かう感じです。気温差はあまり気になりませんでした。

 バスでの長距離移動は、僕は大丈夫です。だってしょうがないじゃないですか。それにもう死んでもいいやって気持ちで乗ってますから、全然つらいとは思いませんよ。


――食事に関してはどうですか?

井野口 これはきついですね(笑)。チームを支えてくれるボランティアの方の家にホームステイしているんですが、ここでは家にあるモンはなんでも食っていいって言われているし、毎日ではないけど、食事を作ってくれる時もあります。でも、基本的にはナイターで試合をこなす僕と、共働きで息子さんも働いているステイ先のご家庭とは生活のサイクルが違うんで、食事は自分で作ることが多いですね。近くにウォルマートがあるんで米買って自分で炊いてます。あと、ステイ先の奥さんが作ってくれる食事はおいしいですよ(笑)

――今年は2年目ということでアメリカでの選手生活に慣れたのでは?

井野口 それはありますね。去年はいつクビ切られるかなって冷や冷やしているうちにシーズンが終わったっていう感じでしたから。今年は少し余裕ができて、(シーズン中の)クビはないだろうって。さすがにシーズンの最初になかなか試合に出ることはできなかったときは、少し焦りましたけど(笑)

――アメリカに来て、自分の中で何か変わったことはありますか。

井野口 そうですね。一言でいうと、ずぶとくなりました。とくに今年になってですね。さっきも言いましたが、去年まではちょっと打てないとすごく気にしましたけれど、今年はあんまり気にしないっていうか…。
 技術的には、投手の傾向がつかめたっていう感じですね。とにかくストレートをいかに打つか。それ一点ですね。こっちのピッチャーはとにかくストレート勝負なんですよ。ストレートで何度もやられてやっと変化球投げてくるって感じですね。深く考えないですね。全てにおいてそう。クイックにしても、盗塁をされてから(投げるのが)早くなる。もちろんピッチャーにもよりますけど。あんまり『予防』っていう考えはないですね。考えすぎるっていうのは日本人のいい点でもあるんでしょうけど、悪い点でもあるでしょうね。でもこっちでは、もうあまり考えない方がいいです。とにかく、まずはストレート狙い。ストレートがきたから次はカーブもあるかなっていうのはいらないですね。打たれるまでは、彼らは勝負球にはまずストレートですから。

――ということは、先程の秦(元)監督の教えの件も含めて、こちらへ来て、力のあるストレートへの対応力はずいぶんついたんだと思います。しかし、井野口選手が目指すNPBということになると、ストレートへの対応より変化球への対応の方が大事になるのでは?

井野口 いや、それは一緒だと思います。NPBのスカウトの方々の僕への評価は、速いストレートがうてるのか?ということだったんです。でも、BCリーグでは、速球派は少なかったですね。145キロ投げる投手はリーグ全体で数人でしたから。それに僕に対してはだいたい変化球勝負が多かった。だから、変化球に対応できて、ストレートがきても軽打できるようなバッティングにしていたんですよ。その方が打率残せますから。でも、それじゃあ、スカウトさんたちを納得させられない。アメリカに来た理由のひとつにはこのことがあります。


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