今永 昇太(駒澤大学)

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- 寸評
- 駒沢大学にプロを狙える才能を持った投手が現れた。その名は今永昇大。北筑から入部した1回生だが、予想以上の好投手であった。先発した中大戦で常時140キロ前後・最速144キロを計測。6回途中まで1失点の好投であった。現時点で駒大のエースだけではなく、その先のプロまで狙える実力を持った本格派投手の登場だ。
(投球内容)
マックス144キロ
常時140キロ~142キロ
スライダー 120キロ前後
カーブ 115キロ前後
フォーク 120キロ前後
彼が素晴らしいのはコンスタントに140キロ台のストレートを投げる上に、テンポ良くストライクを取れる制球力があること。それが出来ているのも始動からフィニッシュまで合理的な動きが出来ているフォームであるということだ。余分な動作・余分な力みを入れないから安定して140キロ台のストレートを投じることが出来る。これは素直に凄い素質である。
スライダー、カーブの2球種。時折、フォークを投げていたが、頻度は少ない。主に横に滑るスライダーのコンビネーションで勝負するピッチャーだ。
(配球)
ストライク先行の配球で投球を組み立てる投手。安定してストライクが取れる制球力があるので、テンポ良くストライクを取っていき、自分を優位に持ちこんでピッチングを展開していく投手。打者は追い込まれた時点で打てる確率は0ストライクに比べて限りなく減少していくので、ストライク先行のピッチングは妥当性のある投球術。ストライク先行のピッチングが出来ているからこそ高めの釣り球で勝負出来る。この試合ではストレートだけで三振を奪っていったが、そのうち高めの釣り球で
ただ常時140キロ前後を投げるスピード能力があるとしても、一試合通して圧倒出来るストレートであるかといったら否。綺麗なフォームから綺麗な球筋で投げる為、フォームによる打ち難さはあまり感じない。ストレートの勢いがあるうちは抑えられるが、後半になってくると球威が落ちて、速球も130キロ中盤に落ち込んでいたので、140キロ台に標準に合わせていた中大打線から尻上がりに捉えられるようになり、6回途中で降板。
課題を上げると
・まだ9回まで継続的にストレートを維持出来るスタミナ
・あるいは終盤にギアを入れられる投球術
・縦の変化・緩急が少ない投球内容
の3つであろう。ただこの3つは彼ならば必ずクリア出来る可能性を持っている。まず他の投手に比べてロスが少ない投球フォームであるので、長いイニングを投げ抜くスタミナは身につけることは可能であり、終盤にギアを入れるピッチングは場数を重ねていけば、いずれは出来るようになるだろう。
あとはストレート主体のピッチングは替えてほしくないが、もう少しカーブ系統、新たに縦の変化球を織り交ぜられるようになるとなおいい。今は横の変化、コーナーワークの使い方は既に習得出来ているので、段階的にピッチングの幅を広げることが可能な投手であると思う。今日は途中降板したのは残念かもしれないが、ストライク先行だけの投球で完封するよりも、今日のように徐々に捉えられて失点した形での降板というのは課題が明白になって、今後に活きる内容ではないだろうか。
(投球フォーム)
セットポジションから始動する。右足をゆったりと上げていき、左足をしっかりと体重を乗せてバランスを保つことが出来ており、その後の滑らかな体重移動を行うことが出来ている。
左足をショート方向へ伸ばしていきながら、重心を下げていく。お尻から先行する「ヒップファースト」が取れており、捻りを入れることが出来ているので、縦系の変化球の習得が可能であり、カーブだけではなく、フォークの習得も容易であろう。右足を柔軟に送り込んで、着地することが出来ており、下半身の使い方は特に文句なし。踏み込んだ足がギリギリ開かずに骨盤も本塁方向へ真っすぐ推進し、軸足の押さえ付けも粘りがあり、低めの制球力を支える。
右手のグラブを斜めに伸ばしていきながら、右肩の余計な開きを抑えることが出来ており、しっかりと胸に抱えることが出来ており、両サイドの投げ分けが実現出来る。テークバックは内回りの回旋でトップを作る。あまり背中に入りすぎて、左肘が下がりすぎることがあるので、その点だけ気を付けていきたい。リリースでは打者寄りでリリースすることが出来ていて、しっかりと指先へ力を伝えることが出来ている。それが出来ているのは始動からフィニッシュまで下半身主導のステップで地面からの力を利用して、投げ終えているからだ。
じっくりと観察してみたが、ここ最近の東都の一年生左腕では技術的なモノはかなり高いレベルに到達している投手ではないだろうか。想像以上の技術力の高さを持っている。 - 将来の可能性
- 回転数の高さを感じる質の高いストレート、常時140キロ台を計時する合理的な投球フォーム、投球以外の技術の高さと大学1年生左腕ではずば抜けた力量・完成度を誇るピッチャーといえるだろう。故障なく順調に行けば東都を代表し、いずれプロを狙える投手になっていくのではないだろうか。秋では終盤まで粘り強く投げられるスタミナを付けることが出来れば、エース格として活躍出来るだろう。ただまだ身体が出来ていないので、いきなり無理強いせず段階を追って育ててもらいたい投手。この4年間、追いかけていきたい投手である。
- 情報提供・文:2012.06.13 河嶋 宗一
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