久保 貴大(筑波大学)

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- 寸評
- 2007年の夏の甲子園で甲子園優勝を決めた佐賀北。久保は背番号1ながら救援として試合を締め、甲子園優勝投手となったのは記憶に新しい。卒業後は筑波大学に進学。決勝で投げ合った野村 祐輔は多大な注目を集める一方で、久保はじっくりと力を蓄えてきた。2年秋、3年春に防御率リーグ2位と躍進した。なんとか彼を見たいと思っていたが、時期が合わず、ようやく4年秋に見ることが出来た。ここまで進路の情報が出ていないが、彼は社会人で続けられるだけの力量を持った投手であると思っているので、取り上げたいと思う。
(投球スタイル)
ストレート 141キロ
常時135キロ~130キロ後半
カットボール 130キロ前後
スライダー 120キロ後半
実に鍛え抜かれた重厚な下半身には辻以上のエンジンの大きさが伺えた。テークバックの小さいフォームから投じるストレートは常時135キロ~140キロ(マックス141キロ)を計測。ストレートのスピードは辻と変わらないもの、球威のあるストレートは本物。
重みのあるストレートはプロの若手投手と遜色ないレベルにあった。変化球は130キロ前後のカットボール、125キロ前後のスライダー、100キロ前後のカーブ。割合は少なかったが、ツーシームも投げていた。武器となるのはカットボール。打者の手元で鋭角に曲がるカットボールは大きな武器だが、基本はそれしか武器はない。つまり横の変化しかない。打者にとってはヒットにするにはこれほど容易い投手はいない。そして彼の投球には遊びがない。フォームにも遊びがない。常に一生懸命。打者の間を外したり、駆け引きが優れた投手ではない。余裕が見えた辻と比べると大きな差があった。その差は意識次第で埋めることは可能だ。
ただ彼の良さというのはヒットを浴びながらも最少失点でしのぐことが出来る粘り強さだろう。ヒットは打ちこまれやすい球筋、フォームだが、要所ではコーナーを厳しくついて抑える投球術はあるようだ。
(クイックタイム・フィールディング)
クイックは1.2秒前後と素早いクイックが出来ており、フィールディングの動きは卒なくこなしている。
(配球)
・右打者
外角中心にストレート、スライダーを投げ分けていく配球。時折、インコースへ突くことはあるが、外角主体の投球。右打者に捉えられることは少なく、自分の投球は出来ている。
・左打者
彼はどちらかというと左打者を苦手にしている印象がある。ストレートは両サイドに投げ分けていきながら、スライダー、カーブを外角に投げてカウントを整えていき、追い込んでストレートで決めていく配球を見せるが、タイミングが合っているのか痛打されることが多い。
(投球フォーム)
重厚な下半身で支えて腕を力強く振り抜くフォーム。無駄な動作を省き、コンパクト且つ力強い。
セットポジションから始動する。左足を真っすぐ上げていき、右足は一本足で立つ。左足を三塁側方向へ伸ばしていき、前膝を送り込んで着地していく。捻りを入れるフォームではなく、横の動きで投げていくフォームなので、縦の変化球ではなく、横の変化球向きのフォームであるといえる。左腕のグラブをまっすぐ伸ばしていくが、打者と正対してしまい、出所は見易くなっている。
テークバックは小さく取っていき、しっかりとトップを作る。そしてリリース。ぎりぎりまで粘るリリースではなく、腕を叩きつけるような感覚で、力強く振り抜いていくため細かな回転をかけるのではなく、威力のあるストレートを投げている。
フォームは開きの速さが見られるフォーム。また投球フォームが一定なので、打者とすればタイミングが取りやすい。社会人になってからの課題は投球フォームに間を置いて投げるなど、打者からタイミングを合わせにくいフォームに改良していくことではないだろうか。 - 将来の可能性
- 速球の威力はプロに指名された辻 孟彦よりも上。ただ横の変化しかなく、駆け引きに優れない投手ではない。投球フォームも一定なので、打者から合わせやすいフォーム。威力ある速球を投げる土台・フォームを実現することが出来たが、もし社会人で続けるのならば、打者にとっては打ち難いフォーム、投球術を極めていくことが必要ではないだろうか。
取り組み次第ではいずれ2年後のドラフト候補として注目される潜在能力を持った投手。大学では高校時代ほど注目はされなくても、地道に実力をつけてきた。まだその潜在能力は開花するまでに至っていない。ぜひ社会人でも続けて恵まれた素質を花開かせてもらいたいと思う。 - 情報提供・文:2011.12.07 河嶋 宗一
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