連載企画 Human 杉浦正則(日本生命)

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第4回 大学4年の明治神宮大会で優勝投手に!2013年12月07日

 同志社大に入学して2年生までの杉浦は、ベンチ入りしたり外れたりということを繰り返していたが、3年生になったあたりから、投手陣の中心にいるという意識も強くなってきていた。当時の同志社大には1年下には片岡 篤史がいて、もう1年下には宮本 慎也など全盛期を誇っていたPL学園から、輝かしい実績を引っ提げている選手も何人か入学してきていた。

 そんなこともあって、選手層も厚くチーム力も向上していた。リーグ戦では常に上位を争う存在となっていた。
「3年生になった頃から、エースの4年生の方が1回戦を、私は2回戦を任されるようになっていました」

 関西学生野球連盟の中では、名門の同志社大だが、その最大のライバルとしては立命館大がある。地元では「同立戦」は、「京都の早慶戦」とも言われ、西京極球場(現わかさスタジアム)をメイン球場とし、特別な試合として扱われている。
 その立命館大には、同世代のライバルとして長谷川 滋利がいた。長谷川はその後プロ入りしてオリックスで活躍するだけではなく、海を渡ってメジャーでも中継ぎ投手としての役割を十分に果たすようになる投手だった。東洋大姫路時代には甲子園にも出場しており、そこまでの球歴としては杉浦を勝るものがあったのだ。しかし、「甲子園組には負けたくない」という杉浦の意識はここでも発揮されていた。

 その、長谷川を擁する立命館大とは大学最後のシーズンとなった1990年秋は、同率1位となり、優勝決定戦を戦っている。同志社大はその試合に勝ち、秋の大学日本一を争う明治神宮野球大会に出場することになる。
 10校が出場(当時)する明治神宮大会で同志社大は2回戦から出場し、杉浦は初戦で九州産業大を3安打で完封する。

連載企画 Human 杉浦正則(日本生命)

日本生命保険相互会社 杉浦正則さん

「当時は亜細亜大に小池 秀郎(後に近鉄→中日など)と高津 臣吾(ヤクルト)などがいて、非常に強かったという印象がありました」
 と振り返る杉浦だが、準決勝で同志社大はその亜細亜大を下して決勝進出。決勝の相手は東京六大学の覇者立教大だった。
「ウチもそうですけれども、立教もそんなに常連ではなく、そういう意味では、珍しい決勝だったと思うんですけれども、非常に白熱していましたね。延長戦になったんですけれども、最後は、相手のエラーで勝ち越しすることができました」

 その試合は、杉浦は0対2とリードされたまま6回からリリーフのマウンドに上がるのだが、その直後にチームが逆転。さらに、8回にも四番松田選手(PL学園=現流通経済大柏監督)のタイムリーなどで2点をリードして、そのまま逃げ切れば優勝というところだった。ところが、その裏杉浦が立教大の五番内田選手(前橋)に同点2ランを浴びてしまう。
 結局試合は延長戦にもつれこみ、同志社大は杉浦、立教大は先発した高橋(越谷北)が投げ続けていた。延長戦は10、11回と続いていく。サドンデスを思わせた延長12回に立教大の内野に送球ミスが出て、これが決勝点となる。その裏、杉浦は渾身のスライダーで最後の打者を三球三振に切って取った。

 こうして、杉浦は明治神宮大会優勝投手となり、同志社大は12年ぶり2度目の秋の大学日本一に輝いた。マウンド上でバンザイをする杉浦に野手が駆け寄って大きな輪ができた。その輪の中には、その後、この神宮球場をホームとして活躍していく宮本 慎也もいたのだ。

 杉浦は、関西学生リーグでは通算57試合に登板し、通算は23勝14敗で防御率は1・57という数字を残している。
「大学野球の思い出ですか、やはり、4年生の最後のシーズンに優勝できたことでしょうかね。そして、さらに明治神宮大会でも優勝することができたことだったと思います。丁度、もう一人の投手と1年下の片岡(篤史)が骨折で出られなくて、戦力は落ちていたんですけれども、その分、チームとしてはまとまりができていたんでしょうね」

 その年のドラフトでは杉浦は、指名回避となった。全日本の候補選手に選ばれていたということもあって、当時はアマチュアだけが出場可能だったオリンピックの凍結選手ということになっていたのだ。同世代では小池が8球団競合の末、ロッテが交渉権を獲得。福井工大の水尾 嘉孝(大洋)が、「史上初の契約金1億円投手」と話題にもなっていた。ライバル長谷川は単独1位指名でオリックスに入団した。
 そんな中、杉浦はオリンピックを目指して、内定をもらっていた日本生命に進んで社会人野球の道を歩むことを選択した。

(文=手束 仁

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