連載企画 Human 杉浦正則(日本生命)

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第6回 日本生命に入社し「オリンピックに出てメダルを取りたい」という意識がさらに強くなった2013年12月21日

 若い選手がのびのびプレーしていたということが強く心に残ったというのが、杉浦 正則の日本生命に対する印象だった。そんなこともあって、声をかけてもらった関西のいくつかの有力社会人チームから、最終的には日本生命を選んだ。そして、そのことで、日本代表を目指して、まずは、「オリンピックに出場してメダルを取りたい」という意識は、さらに強くなっていった。

 さらには、社会人野球選手としても、やれる限りは現役を続けて行きたいという気持ちにもなっていた。
「一番強かったのは、先のことは考えず、オリンピックに出てメダルを取りたいという意識ですね。もちろん、プロも視野には入っていたんですけれども、まずはオリンピックに出場するということが最優先でした」
 杉浦にとってのオリンピックという存在はそれほど大きかったということである。

「ただ、オリンピックに選ばれるためにはチームで活躍して勝たなくてはいけないわけです。チームが弱ければ、目立たないし活躍しても意味がないんですよ。だから、チームが勝って自分が活躍することで、オリンピック代表選手に選ばれていくのだろうと思っていました。そのために一生懸命にやらなくてはいけないということだったんだと思います」

連載企画 Human 杉浦正則(日本生命)

日本生命保険相互会社 杉浦正則さん

 こうして、杉浦はオリンピック出場ということを最大目標に見据えることによって、自分の所属する日本生命というチームに対しても貢献し、さらにはその先にプロ入りということがあれば、それもありかなということをやっと意識するようになってきていた。ただ、考え方としては、「今の状況で、今のチームでベストを尽くして一生懸命にやっていく」ということでブレはなく、一直線に連なっていた。
 オリンピックが具体的に目の前に存在していたということで、杉浦としては意識が作りやすかったというところもあった。

「自分自身、子どものときから野球をやっていてプロ野球というのは、もちろん憧れではあったんですけれども、あくまで憧れなんですよ。だけど、オリンピックというのは自分が一度代表候補に選ばれたことで、より具体的な目標になったんですね。それで、そこに出たいという気持ちが強くなってきて、具体的に、どうしていけばいいのかということで計画も立てましたからね」

 それは、杉浦自身にとっても、本当に心から目指すものという意識になれたということである。ある意味では、代表となった選手の誰よりも強い意識と思いでオリンピックを目指していて、それで選ばれたのだと言っても過言ではないであろう。

 こうして、入社2年目となった1992(平成4)年のバルセロナオリンピックに晴れて代表選手として選ばれたのだった。選手としても、もっとも脂の乗ってきた時期でもあった。プレーヤーとしても、物事の感動を素直に感受できる若者としても、杉浦はもっともベストのタイミングでオリンピックという世界最大のスポーツイベントとして“世紀の祭典”の檜舞台を味わうことが出来たのである。
 その憧れのオリンピックの最初の感動は、やはり開会式だった。

「何が素晴らしかったって…、開会式の花火がすごくきれいで、言葉では言い表せないくらいのものでした。それを、スタジアムの中から見ていると、その屋根が丸くなっていて、その一面に花火が見えていて、それは素晴らしかったです。それまで、さんざん待たされていたんですけれども、そういったことも一切、忘れさせるものでしたね」
 と、杉浦は今でも興奮気味に話すくらいに、開会式の感動は大きかったという。もちろん、そのビジュアル的な美しさの感動もあったであろうが、それは、スタジアムのフィールドの中に立つことが許されている限られた者しか見られない、だからこそ、より尊いものとして印象強かったのであろう。

「ただ、選手がフィールドから出るまではまた時間がかかって、相当待たされることになるんですけれどもね(苦笑)」
 もちろん、試合というのは国際試合としてもそれが初めてではなかったので、オリンピックといえども、そこに対する感動はそれほど大きなものではなかった。しかし、それ以上に選手村での生活もまた、オリンピック代表として選ばれてみなければ味わうことができない。選ばれた選手ならではのものという世界があったのであろう。

(文=手束 仁

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