2015年07月21日 東京ドーム

NTT西日本vs永和商事ウイング

第86回都市対抗野球大会 1回戦
印刷する このエントリーをはてなブックマークに追加   

今大会初のタイブレークで勝敗決するも、強い印象を残した永和商事ウイングの“全力疾走”

 今大会初のタイブレークで勝敗が争われるとはまさか思わなかった。2年連続とはいえ今年が通算2回目の出場となる永和商事ウイングに対し、NTT西日本は通算26回出場を数える名門。そのNTT西日本が1回表にヒットと四球で2死一、三塁のチャンスを迎えて、やっぱりな、と思った。しかし、ここを無得点に抑え、2回裏には7番中村毅のタイムリーで先制すると俄然、勝負の行方はわからなくなった。

 永和商事ウイングで驚いたのはスターティングメンバー中、左打者が1人しかいなかったことである。対するNTT西日本のスタメンには左打者が6人並んでいる。左打者全盛の今、過半数以上の左打者は当たり前である。左打者の利点は一塁ベースに近いことで、打者走者の一塁到達タイムで比較すると左打者は右打者にくらべて0.2~0.3秒程度速い。しかし、永和商事ウイングの各打者は右打席に立つ不利をまったく感じさせなかった。

 私が俊足と判断する打者走者の各塁到達タイムは「一塁到達4.3秒未満、二塁到達タイム8.3秒未満、三塁到達12秒未満」。これを永和商事ウイングの7人(10回)は楽々とクリアした。NTT西日本の5人(8回)も立派だが、永和商事ウイングの全力疾走には言葉も出ない。今年、これ以上の走りを見せたのは早慶戦2回戦で早稲田大が記録した7人(11回)しかいない。何度も言うようだが、右打者偏重の永和商事ウイングがそれに匹敵する走塁を見せたのである。

 永和商事ウイングは投手も頑張った。高橋康平、藤本瞬、渡辺康介、神谷貴之、狩野翔平の順で継ぎ、9回1死まで1対0のロースコアを守り、勝利を目前にしていた。高橋が6回まで無得点で凌ぎ、2番手の左腕・藤本がそれを上回る緩急でNTT西日本の強打線を封じた。勝利は間違いないと思ったのもつかの間、最も気をつけなければいけない一発が9回1死から出た。途中出場の補強選手、横田拓也(パナソニック)が2ボール1ストライクからの4球目をレフトスタンドに放り込み、勝負を振り出しに戻したのである。

 延長に入ると速球派が両チームから登場し、勝負とは別に楽しめた。NTT西日本の3番手・松田拓磨が146キロ、永和商事ウイングの3番手・渡辺康介がそれを上回る147キロを計測するのだ。松田は神戸国際大附、亜細亜大でもマウンド姿を見ているので驚かないが、渡辺を見たのは初めてである。

 大宮武蔵野高(オリックス・佐藤達也の3学年後輩)卒業後、日本ウェルネススポーツ専北九州校を経て永和商事ウイング入社という異色の経歴で、年齢は26歳。ドラフト的に見れば盛りを過ぎた年齢だが、ストレートにはドラフト候補と言ってもいい勢いがあった。

 この両投手が10、11回を無得点に抑え、ついに勝負はタイブレークに持ち込まれる。統計的にこの制度は先攻が有利である。それを実証するようにNTT西日本が四球を1つ挟んだ3連打で6点を挙げ、勝負を決定的にした。永和商事ウイングは渡辺がよかったので、11回限りで降板させるのはもったいなかったかもしれない。

 ドラフトを視野に入れれば、NTT西日本の7番、戸柱恭孝がよかった。左打ちのバッティングは6打数3安打の猛打賞、捕手としては技巧派と本格派の3人をうまくリードし、イニング間の二塁送球は最速1.88秒の強肩を見せつけ、永和商事ウイングに盗塁を許さなかった。25歳の今年は最後のチャンスになると思う。2回戦以降でも溌剌としたプレーをみせてほしい。

(文=小関 順二

応援メッセージを投稿する