2015年07月27日 東京ドーム

王子vs日本新薬

第86回都市対抗野球大会 準々決勝
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王子投手陣を引っ張る好捕手・船越涼太が先制2ランを放ち、ベスト4進出に貢献!

 今大会は好捕手が多い。
イニング間の二塁スローイングで強肩の目安「2秒未満」のさらに上を行く「1.9秒未満」を達成したのが山崎 裕貴(Honda)、木下 拓哉トヨタ自動車)、戸柱 恭孝(NTT西日本)に、この試合で最速1.88秒を計測した船越 涼太王子)の4人。
見ていない試合、チームもあるので抜けている選手がいるかもしれないが、この5人の強肩はかなり目立った。

 捕手は肩だけではないのでバッテリーというくくりでも見てみよう。
素晴らしかったのは1回戦の石橋 良太―山崎(Honda)、近藤 均-船越(王子)、2回戦の上杉 芳貴―木下(トヨタ自動車)、浜崎 浩大―戸柱(NTT西日本)という4組のバッテリー。石橋―山崎、近藤―船越は速球派にあえて変化球主体のリードで打者に的を絞らせず、勝負どころのストレートの威力を際立たせたところが見事で、上杉―木下、浜崎―戸柱はストレート主体のリードで本格派投手の持ち味を引き出したところが評価できる。

 その中で誰に最も一番魅了されたのかと言うと、近藤―船越である。1回戦でセガサミーを4安打、無失点に抑え、2011年以来4年ぶりの勝利をチームにもたらすのだが、この試合で近藤―船越のバッテリーは徹底的にストレートを隠し、スライダー、カットボールをストレートのような感覚で多投。とくに威力を発揮したのがカットボールで、スターティングメンバーに6人並んだセガサミーの左打者の内角を激しくえぐった。

 勝負どころではスライダー系に慣れた打者を嘲笑うようにストレート、フォークボールを投じ、10三振のうちフォークボールで奪ったのが5個、ストレートで奪ったのが4個という内訳。いかに、スライダー系(とくにカットボール)とフォークボール、ストレートの使い分けが打者の脅威になったがわかる。

 24日にはやはり関東の強豪、Hondaの前に近藤が立ちはだかり、被安打6、奪三振4、四球2という完封劇を演じている。近藤と同じ“本格・技巧”タイプでは小野 和博(富士重工業)や関谷 亮太JR東日本)の名がドラフト候補として早くから挙がっているが今季の調子は芳しくなく、その分近藤の存在が大きくクローズアップされてくる。

 近藤の話題が長くなった。27日の日本新薬戦では近藤はマウンドには立たず、長岡 宏介、川口 盛外、大宮 慎司の3人が登板した。長岡は福地山成美高時代、ドラフト候補として知られた存在である。ちなみに近藤は福地山成美高では長岡の1年先輩で、08年夏の甲子園大会では初戦の常葉菊川戦では2番手として登板、ストレートが最速141キロを計測している。私のノートには「ヒジ出ない、コントロール不安定」と書かれているので、7年の歳月が選手を大きく変貌させる好見本と言っていいだろう。

 高校時代にドラフト候補として評価された長岡の成長は近藤ほどめざましくはないが、この日のストレートの最速は145キロと速く、124、5キロのフォークボールのキレも近藤に負けていない。さらに3番手で登板した大宮は23歳と若く、希少価値のある左腕本格派としても注目できる。この2人の未完の大器を船越は実に辛抱強くリードした。

 長岡は145キロ、大宮は142キロ――それなりに速いが、緩急の組み合わせがなくては生きていけないボールである。長岡はフォークボール、大宮はチェンジアップを勝負球に見据えて、逆算して他球種とストレートを交えて辛抱強く配球を組み立てた。

 バッティングでは5回表に走者を二塁に置いて初球の半速球をしっかり上から叩いて、先制の2ランを放ち、若い長岡を助けた。この大会までその存在を知らなかった分、私の中で船越の印象はどんどん強くなっている。

(文=小関 順二

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