石田雄太の斜説

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第9回 プロ野球は百年構想をどう描くのか?2014年02月04日

 百年ってのは、気の長い話だねぇ。
 ”百年構想”というスローガンがある。
 これは、サッカーの世界から最初に聞こえてきた言葉だ。
 Jリーグのホームページを見ると、その理念は、自分が住む町にある緑の芝生の上でやりたい競技を楽しめるスポーツクラブを作り、世代を超えたスポーツの輪を広げることだと書かれている。Jリーグは”百年構想”を掲げ、地域に根差したスポーツクラブを核としたスポーツ文化の振興に取り組んできた。

 Jリーグチェアマン、川淵 三郎氏と初めて会ったのは、今から26年前のことだ。当時、Jリーグの前身である日本サッカーリーグは、釜本 邦茂氏の裸体をモチーフにしたポスターを作り、「国立競技場を満員にしようキャンペーン」と銘打った、リーグ戦の活性化を図っていた。その中心にいたのが、川淵氏だった(肩書きは”日本サッカーリーグ事務総長”だった)。
 その取り組みをNHKの「サンデースポーツスペシャル」という番組で取り上げようということになり、新米ディレクターとして川淵氏に会いに行った。国立競技場をどうやって満員にするのかを力説した後、川淵氏は夢の集大成ともいえる一通の企画書をそっと差し出した。そこには確か「スーパーリーグ構想」と書かれていたように記憶している。つまりはサッカーをプロ化する、という一大構想である(新米ディレクターの分際で、正直、できっこないと思った。何しろこちとら野球好きだったから。川淵さん、ゴメンなさい)。

 時は1988年の秋、バブルの予感が漂う、華やかかりし頃の日本。就職活動にいそしむ学生にとって高嶺の花だった都市銀行が、それから10年ちょっとで半分以下になってしまうなどとは、当時は誰も想像しなかったはずだ。マラドーナの独り舞台だったメキシコからわずか2年、日本人にとってのワールドカップは、夜中に眠い目をこすって見る、別世界のサッカーだと思い込んでいた。そんな時代に、日本のサッカーがプロ化されるなどというのは、想像もできない、バカげた夢物語だった。
 しかし、プロ化はそれから5年後、予想もしない派手な幕開けとともに現実のものとなった。そしてそれから10年も経たない2002年、別世界だったはずのあのワールドカップの試合が、日本でナマで行われた。その後も、国立競技場は幾度となく、サッカーで満員になる。今や、日本がワールドカップに出場することは、当たり前に等しい。決勝トーナメントに進み、あわよくばベスト8、ベスト4、ついには選手の口から「優勝」などという言葉も飛び出すようになった。プレミアリーグのマンUにも、セリエAのACミランにもインテルにも、日本人選手がいる。しかも、揃って主力選手として活躍している。この20年の日本サッカーの歩みたるや、なんと早いことか。

 一方のプロ野球は、今年で80周年だ(ホントは78周年だけど)。
 これから先の20年、プロ野球に”百年構想”はあるのだろうか(Jリーグはこれから百年、プロ野球はあわせて百年だ)。
 1934年から1953年までの20年は、ほぼ一リーグに重なる黎明期の時代だ。1954年から1973年までの20年は、ONとV9に象徴される巨人軍の時代だった。1974年から1993年までの20年は、優勝チームが分散した群雄割拠の時代だったと言える。そして1994年から2013年までの20年間は、日本人がメジャーとの距離を縮めた日本人メジャーリーガーの時代であった。

 それでは、いよいよ百周年を迎える2014年から2033年までの20年。
 日本のプロ野球界は、どんな20年を目指すべきなのか。
 その前に、まずはこの20年を振り返っておこう。

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