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第1回 アスレチックスは、なぜ出塁率を重視したのか2014年05月07日
【目次】
[1] 『マネー・ボール』が変えた出塁率への評価
[2] 「得点を増やす」から出塁率は重要である / 出塁率は打者の能力以外に左右されにくい
[3] もうひとつの理由 〜年俸抑制〜 / データを見るときに意識すべきこと
4.もうひとつの理由 〜年俸抑制〜
得点との結びつきが強いこと、選手の能力をある程度正確に反映していること、出塁率が重要視される大きな理由はこの2つだ。ただ、アスレチックスが、というよりもビリー・ビーンが出塁率を重要視した理由はもうひとつ存在する。
それは当時の球界で出塁率の重要性がほとんど認識されていなかったこと、端的にいえば出塁率の高い選手の中にも年俸がそれほど高くない選手がそれなりに存在していたことだ。
仮に出塁率の重要性が広く知られていたとすれば、それは選手の年俸にも大きな影響を与える要素となっており、資金力に優れたチームがこぞって出塁率の高い選手を獲得していただろう。ところが、実際にはそうではなかった。そのために、アスレチックスはより低い年俸で高い得点力を手にすることができたのだ。
だが、ほどなくして他球団も出塁率の重要性に気づくことになる。その結果、出塁率の高い選手の年俸は高騰し、アスレチックスは低い年俸で高い得点力を手にすることができなくなってしまった。そうして、一時期アスレチックスがなかなかプレーオフに進出できなくなったのは有名な話だ。
MLBの各球団がデータ分析の専門家を雇うなどして、他球団に先駆けてより優れた選手を見つけ出そうという競争は今でも続いている。近年また好成績を残しはじめたアスレチックスが、かつての出塁率重視のような、他球団が気づいていないセオリーを発見し活用しているのではないかと推測する人も多い。

5.データを見るときに意識すべきこと
指標を使って選手を評価しようとするときには、その指標がどれだけ得点への影響を持っているか、またその数字がどれだけ選手の能力を反映したものなのかを確認したい。マネー・ボールの出塁率重視のエピソードは、野球のデータを扱う上でとても大切な2つのことを教えてくれる。
特に後者の「指標が本当に選手の能力を反映しているのか」は現状見過ごされることが多いように感じる。しかし、この2点は車の両輪のように、データを見るときには常に意識されなければならないことだろう。
(文=市川博久+DELTA)
6.最後に…このデータをどう読み解くか?

上記の表は、2014年4月29日現在の出塁率ランキングですが、このデータをあなたなら、どう読み解いていきますか?
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- DELTA
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- 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。 - 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。