第4回 データを使った守備評価の基本(2) 「"DER"の次のステップ」2014年07月09日

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【目次】
[1] 内野と外野に分け、守備の働きを捉える
[2] 「Batted Ball」とその先の評価
[3] 最後に…このデータをどう読み解くか?

必要となる「Batted Ball」スタッツの集計

 内外野の打球の処理率の計算は、ボックスコアに記載される情報だけではできないという問題がある。
 ボックススコアでは、打球がどんな打球だったかがわからない。「レフト前ヒット」が、ゴロで三遊間を抜けた打球なのか、フライが左翼手の前に落ちた打球なのかなどは記載されないのだ。その打球種別がわからないと、内外野の打球の処理率は算出できない。
 アメリカでは、失点のメカニズムの推定を目指す研究者たちのリードで、打球種別の詳しい記録が始まり、それは「Batted Ball」スタッツと呼ばれている。当初投手の働きの分析を目的に採取されたが、その後守備の分析にも活用されるようになった。守備の評価を精密なものにする上で有用なこの数字が、日本で求められる日も近いだろう。

守備評価の次のステップ

 内外野で分割して計算した処理率を、さらに細かく切り分けて計算しようという研究も進んだ。各ポジションの責任範囲を決め、その内側の打球をどれだけアウトにしたかを確認しようとするものである。DERではチーム全体が対象だったが、ここに至ると1つのポジション、1人の選手を対象にした守備力の把握が可能になる。
 UZRやDRSなどの守備範囲に関する評価は、このポジションごとの処理状況が算出のベースとなっている。実際には、処理した打球がどの位置だったかなど難易度を加味し打球処理に対する価値の重み付けを行い、それを処理した(もしくはできなかった)選手の働きを実態に近い形でとらえている。また値を得点(阻止した失点)という基準に換算するなど様々な数字の加工を行ってもいるため計算はさらに複雑になるが、土台にあるのは打球の処理状況であり、その点はDERと変わらない。
 こうした数字の算出には、ボールがどの位置に飛んだかを細かく集計する必要が出てくる。アメリカではそうした情報を集計する企業が存在し、守備に関する分析を支えている。


 アメリカにおける守備評価に関する研究は、記録の集計という根本的な部分に変化を要求してきた。これは打撃や投球の評価についての研究過程ではあまり見られなかった現象だ。それだけに既存の感覚とのギャップは大きく、納得するのが少し難しい分野かもしれない。それでも基本となるのは「飛んできた打球を、野手がいかに効率的にアウトにしているか」というシンプルなものだ。
 機会の総数が限られ、サンプルの集まりくい守備は打撃や投球に比べ、より長いスパンでデータを捉える必要がある。その点で注意が必要だが、データを用いることで得られる発見も多く、考察を楽しみやすい分野だと言える。今後、多くのファンによるオープンな議論がさらに進むことを望みたい。

【次のページ】 最後に…このデータをどう読み解くか?


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プロフィール

DELTA
DELTA
  • 合同会社DELTA
  • 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
    書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。
  • 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。

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