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第5回 球場のサイズや形は、記録にどんな影響を与えるか?2014年08月07日
【目次】
[1] 球場のホームランの出やすさはどうやったら計れる?
[2] パークファクターの計算方法
[3] 得点やヒットのパークファクターも計算できる
NPB球団の本拠地球場のホームランの出やすさ
では、ここ3年間のパークファクターを見てみよう。

各球場のパークファクターはホームベースから両翼・中堅までの距離以外にも、右中間・左中間のふくらみや外野フェンスの高さにも影響されているようだ。
セ・リーグでは神宮球場・東京ドーム・横浜スタジアムがホームランの出やすい球場、ナゴヤドーム・甲子園球場・マツダスタジアムがホームランの出にくい球場とはっきりとした傾向が出ている。その中でも神宮球場はかなりホームランが入りやすいようだ。反対にナゴヤドームはなかなかホームランが出ない球場だと推測される。
ホームランだけではないパークファクター
球場ごとのパークファクターを見ていると、東京ドームではその値がいずれの年も1を上回っている。これは、セ・リーグの他の5球場の平均と比べてホームランが出やすいことを意味している。東京ドームで投げる投手は不利という印象を受けるかもしれない。
しかし、そうとは言い切れない。確かに、東京ドームではホームランこそ出やすいものの、得点の入りやすさはセ・リーグの他の5球場の平均とさほど変わりがないのだ。
これまでパークファクターとして扱ってきたのは、正確には「ホームランパークファクター(HRPF)」と呼ばれるものである。同じチームの成績を、ホーム球場とビジター球場で比較する方法に当てはめれば、得点やヒットを使っても球場の特性を確かめられる。得点の入りやすさやヒットの出やすさも比べることができるのだ。

東京ドームはホームランが出やすい球場にもかかわらず、得点の入りやすい球場にはなっていない。3年間の得点パークファクターは2011年から順に、0.98、1.06、0.87となっており、リーグ内では平均的かやや得点は入りにくい部類に入る。この原因はホームランが出やすい一方で、ヒットが出にくいことにあると思われる。
日本ではパークファクターと言うと、ホームランパークファクターが話題になりがちな印象がある。ただし、総合的な得点の入りやすさは当然ながら得点パークファクターを比べた方がわかりやすいし、さらにヒットの出やすさも合わせて見たほうが球場ごとの特徴をはっきりとつかめる。選手の成績に対する球場の影響を考えるときにも当然便利だ。
例えば「ホームランは出やすいがヒットは出にくい球場」を、「三振をたくさん奪い、ゴロをうまく打たせる投手」はそこまで苦にしないだろう。だが、「フライを多く打たれる投手」は苦戦するという推測がたつ。「ホームランが出にくく得点も入りにくい球場」なら、投手のタイプにかかわらず優れた成績を残しやすいと読むことができる。
実際に東京ドームのような、「ホームランは出やすいが、得点の入りやすさは平均レベル」という例もある。ホームランパークファクターばかりに目を向けていると、その球場が投手に有利なのか、打者に有利なのかを見誤ってしまうこともある。

- DELTA
- 合同会社DELTA
- 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。 - 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。