第5回 球場のサイズや形は、記録にどんな影響を与えるか?2014年08月07日

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【目次】
[1] 球場のホームランの出やすさはどうやったら計れる?
[2] パークファクターの計算方法
[3] 得点やヒットのパークファクターも計算できる

[4] パークファクターを実際に使ってみよう

パークファクターの使い方・使うときの注意点

 パークファクターの数字を見比べて球場ごとの特徴を調べてみるだけでも面白いが、パークファクターには次のような使い道もある。

【使い方1】 移籍する選手の成績を予測する
 ホーム球場が変われば、選手本人の能力が変わらなくても成績は変わってくる。例えば、ゴロよりもフライを多く打たれるピッチャーが、ホームランパークファクターが低いホーム球場のチームから高いホーム球場のチームに移籍する場合などには、思ったような成績を残せない可能性が生じる、といった予測ができる。

【使い方2】 異なるチームの選手の成績をより正確に比較する
 これまでに説明してきたように、選手の成績は球場の影響を受ける。そこで、ホーム球場のパークファクターの数字を反映させたほうが、より正確な選手成績の比較ができる。ヒットの出にくい球場で.280の打率を残した打者のほうが、ヒットの出やすい球場で.280の打率を残した打者よりも、優れた成績を残したと見なすことが可能になる。

 パークファクターを使う際には、注意しなければならないこともある。

【注意点1】 年度ごとにばらつきのある数字である
 3年間の各球場の数値の推移を見てもわかる通り、パークファクターの値は年度ごとにばらつきがある。特にホームランパークファクターは数字が変動しやすい。ホームランよりも本数の少ない三塁打のパークファクターなどを算出すると、この傾向は顕著に出る。サンプル数が少ない(起きる頻度が低い)指標はどうしてもこの傾向が出やすい。
 そのため、特にシーズン途中での速報値などは扱いに気をつけたい。直近3〜5年間の値の平均で比べたほうが、球場の特徴を正確に把握できるだろう。ただし、その場合は球場の改修などに注意を払う必要がある。

【注意点2】 パークファクターの値は、そのまま「選手の成績への影響度」ではない
 あるチームのホーム球場(球場A)のホームランパークファクターが2.00だったとする。これは「球場Aで試合をすると、同じリーグの他球場の平均と比べて2倍のホームランが出る」という意味である。

 ただし、これは「球場Aを本拠地としているチームに所属している選手は、本来の能力の2倍のホームランが打てる」という意味ではない。
 2倍のホームランが出ることが期待されるのは、試合が全て球場Aで行われる場合だ。1シーズンの約半分はビジター球場で試合をするわけであり、実際にはそのようなことはあり得ない。

 球場Aでは本来の能力以上の数のホームランが打てても、ビジター球場ではそれより少ないホームランしか打てない。だから実際の影響はパークファクターの値よりもずっと小さくなる。

 例を使って考えてみよう。球場Aを本拠地とするあるチームが、球場Aで60試合、それ以外のビジター5球場で12試合ずつ合計120試合を戦ったとする。
 ホームランは180本出た。内訳は本拠地である球場Aで120本(1試合2本)、それぞれのビジター球場で12本ずつ(1試合1本、計60本)だったとする。
 これを、6つの球場で均等に20試合ずつ行った場合に換算すると

 ・球場A 20×2=40本
 ・ビジター球場 100×1=100本
 予想されるホームラン数は140本となる。

 もしプロ野球に本拠地制度がなく、同一リーグの各球団が6つの球場で同じ数の試合をするシステムだったら、球場Aを本拠地とするこのチームは、40本ほどホームランは減ったと推定される。「球場によるサポート」として考えると、180÷140=1.29倍のホームランを打てていたとも言い換えられる。
 パークファクターが、球場が選手の成績に与える影響は、パークファクターの値そのものの印象と比べると、それほど大きくないので注意が必要だ。

【注意点3】 異なるリーグの球場を比べることはできない
 同一リーグの球場との比較なので、セ・リーグで得点パークファクターが1.10の球場がパ・リーグで得点パークファクターが1.05の球場よりも得点が入りやすいとは言えない。

【注意点4】 2010年以前はボールの影響も含まれる
 2011年に統一球が導入されるまでは、ホームチームが規定の範囲内で使用するボールを選ぶことができた。そのため、2010年以前のパークファクターは実質的にはパーク&ボールファクターとでもいうべきものになっている。

最後に…このデータをどう読み解くか?


(文=市川博久+DELTA



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プロフィール

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  • 合同会社DELTA
  • 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
    書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。
  • 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。

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