第6回 成績の平均値を考慮すると見えてくるもの2014年09月09日

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異なるシーズンの成績を比較する

 出塁率と長打率についても見てみよう。なお、この数字もより実質的に打者の攻撃力を把握するため、投手が打席に入ったときの成績は除いている。





 出塁率は戦後平均.325。おおむね.300から.350の間を動いている。長打率は戦後平均で.395。だいたい.350から.450の間で動いており、こちらのほうが揺れは大きい。

出塁率(シーズン平均)
~.2996回
.300~.31917回
.320~.33929回
.340~16回

長打率(シーズン平均)
~.3393回
.340~.37919回
.380~.41929回
.420~17回

 グラフの破線で示しているのは、規定打席に達し最高値を出した選手の値だ。これらの記録の多くが何かしらのタイトルに結びついており、いずれも優れた成績として記憶されているものだ。
 しかし、平均(実線)からの離れ方は、シーズンによって異なり、最高値の価値はシーズンごとに違っていそうなのがうかがえる。シーズン間の成績を精密に比較する際は、そこを意識する必要がある。

「どれだけ抜きん出ているか」の計算例

 ある選手の成績と平均的な成績の関係を確かめ、選手の成績の位置づけを確かめる方法は様々あるが、原初的で簡単な方法として選手の成績を平均値で割り、成績が「平均の何倍だったか」という数字を出すものがある。
 アメリカではこうした計算を経て算出した値に“Relative Batting Average”“Relative ERA”などの名前をつけ、活躍した時代の異なる選手の比較などに使ってきたようである。日本では「打率傑出度」「防御率傑出度」などと訳されているケースも見かける。

 具体的な例を挙げて計算してみる。
2012年に長打率.565を記録した阿部慎之助(巨人)であれば、この記録を2011年の平均長打率で割り
0.565÷0.351=約1.61
言うならば、これが「長打率傑出度」となる。

 1985年に長打率.718を記録したランディ・バース(当時阪神)も
0.718÷0.446=約1.61
が同値となる。

 こうした値を使うと、両者が実際に記録した長打率には.565と.718と差があるが、「平均の何倍だったか」「全体の中でどれだけ抜きん出ているか」という視点では近いレベルだった、というような比べ方ができる。

 比較的手軽だが、これまでとは違った選手間の序列が見えて来る計算なのでなかなか面白い。ぜひ一度試してみていただきたい。インターネット上にも、こうした計算を元にシーズン間の選手の成績を比較した論考をよく見かけるので、それを探してみるのもいい。

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プロフィール

DELTA
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  • 合同会社DELTA
  • 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
    書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。
  • 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。

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