第11回 2015年は、野球観戦を数字で楽しむ【チーム編】2015年02月12日

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【目次】
[1] 「なぜ勝てるのか? なぜ勝てないのか?」その要因の整理をしよう
[2] 得点・失点情報の集め方
[3] 1試合ごとの得点・失点を収集し、グラフにする

1試合ごとの得点・失点を収集し、グラフにする

 各チームの得点・失点をあるタイミング、「点」で確認する方法から一歩踏み込み、1試合ごとの得点・失点を集計し「線」でとらえてみると、さらにいろいろなことが見えてくる。

 1試合ごとの得点・失点の情報を集めるのはかなり手間がかかる。試合結果を追いかけて1試合ずつ丁寧に集計するしかない。


 それでも集計してしまえば、得点の推移を様々なグラフにすることができる。リーグ平均など何かしらの基準を設ければ、得点力の好不調もとらえたりできる。図は2014年の広島の1試合ごとの得点を集計したものだが、平均以上の得点力をシーズンの大部分で維持したが、夏前に得点力を落とし、終盤に再度少し息切れしたのがわかるだろう。

得点と失点と勝利数、戦力の情報を載せたグラフ

 1試合ごとの推移は動きが激しく傾向が見出しにくい。10試合ごと、1ヵ月ごととなると間隔が空き過ぎ、シーズン中にリアルタイムにチーム状態を把握するのには不向きだ。
 そこで一つの案として、毎試合直近10試合の平均得点・失点を算出し、その推移をグラフ化する方法がある。
 10試合の平均得点ということになれば、大勝が生じても均されるためグラフがそこまで上下動しない。その時点でチームが発揮している能力に近い数字が出る。
 失点についても、10試合の平均であればローテーションの主力投手が2回程度登板することになるので、どのレベルの先発投手が投げたかで平均失点が上下動することも少ない。やはりその時点でチームが発揮している失点抑止力に近いものになる。


 図はこの方法を使って、2014年の広島の得点と失点の推移をグラフ化したものだ。今回はセ・リーグ平均の得点、失点を中央に直線で引き基準とした。
 さらにひと工夫して、グレーの縦の棒グラフで直近10試合の勝利数を示し、得点・失点と勝敗の関係がわかるようにした。得点を示す青いグラフが平均を超え、失点を示す赤いグラフが平均前後に保たれているところで、勝利が重ねられている。

 広島の特徴的な動きは、6月前半に起きている。5月から下がり続けていた得点力が下げ止まらず、逆に失点も劇的に上昇していった。それが6月後半から共に回復。6月は8勝10敗と負け越したが、前半に得点減、失点増が同時に起きてしまったことが響いたようだ。
 7月も広島は失点が少し増えており、打線は持ちこたえたが結果的には9勝11敗1分と負け越した。8月は失点がおおむね平均以下をキープする一方で、得点が平均以上に吹き上がったため、15勝10敗と勝ち越している。

 さらに、このグラフに広島の主軸打者ライネル・ロサリオとブラッド・エルドレッドの登録期間を加えてみた。
 目につくのは、ロサリオが出場することによって、青いグラフが右上がりになっている局面が見られることだ。4月後半、6月後半の登録直後、広島は得点力を上げている。また、エルドレッドが抜けた8月から9月にかけては、青いグラフが右下がりになっている。欠場による得点力のダメージが見て取れる。

 得点・失点と勝利数、さらに戦力に関する情報を載せたこのグラフは、チームの状態が把握できる「コントロールパネル」みたいなものでとても便利だ。グラフの動きを先読みして、シーズン途中の補強ポイントを考えたりするのも面白い。

 1試合ごとの得点・失点、また勝敗の情報があれば作成できるグラフで、難しい計算なども必要ない。今シーズンは一度挑戦してみてはいかがだろう。

(文=市川博久+DELTA


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プロフィール

DELTA
DELTA
  • 合同会社DELTA
  • 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
    書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。
  • 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。

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