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第12回 2015年は、野球観戦を数字で楽しむ【攻撃(得点)編】2015年04月08日
【目次】
[1] 得点力をつかむために見るべき数字
[2] 得点と出塁率・長打率を並べて、表をつくってみよう
[3] 信用性の高い指標、低い指標
信用性の高い指標、低い指標
また、指標ごとに信用性が出てくるサンプルサイズが違うということも知っておきたい。MLBでの成績をもとに研究した例によれば、長打率は320打数、出塁率は460打席、打率では910打数が必要とされる。
このサンプルサイズに満たないからといって、いきなり信用性が0になるわけではないが、打者の成績を比較する際によく使われる打率は、一般に考えられている以上に誤差が混ざりやすいといえる。それに比べると長打率や出塁率は比較的少ないサンプルサイズでも信用性が高い。得点に与える影響という点からも、信用性という点からも、打率より出塁率や長打率を見ることが重要といえる。
また、少ないサンプルサイズでも信用性が得やすい指標として、BB%とISOを紹介する。
BB%は四球を打席数で割ったもので、四球によって出塁できる確率を示している。四球での出塁が多い選手は、その傾向を毎シーズン継続する傾向が出やすい。それは安打を多く打つ選手がそれを継続する傾向よりも明確に表れる。意外かもしれないが、四球は選手が自らの能力で奪っている部分が大きい。そのため、少ないサンプルサイズでも信用性が保たれる。
ISOはIsolated Powerの略で長打率から打率を引くことで算出される。同じ打率であれば長打率が高いほどISOも高い数字となり、長打を打つ能力を表している。こちらも少ないサンプルサイズで信用性が高くなりやすい。
これら2つの指標は出塁率や長打率と比べると、得点に対する影響をつかむという点では劣るものの、十分なサンプルサイズが確保しづらいシーズン序盤や出場機会の少ない控え選手でも評価を誤りづらいというメリットがある。公式記録としては扱われていないが、計算式もシンプルで算出にはそれほど手間がかからない。出塁率や長打率と合わせて見ておきたい指標だ。
最後にこれまでにあげた指標で選手を評価する際の目安を紹介したい。選手の評価は相対評価であるため、どんな指標を使うときでもリーグ全体の状況を意識することが重要である。チーム成績の分析を行ったときに、あわせて平均値などリーグ全体の状況をつかんでおくと、選手の成績を評価するときの参考になるだろう。
とはいえ、ボールの規定変更などがなければ、選手の成績はそれほど大きくは変わらない。そこで、指標を見る際の大まかな目安を表にまとめておいた。観戦を楽しむための分析にはこれで十分だろう。

(文=市川博久+DELTA)

- DELTA
- 合同会社DELTA
- 2011年設立。スポーツデータ分析を手がける。代表社員の岡田友輔と、協力関係を結ぶセイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。
書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1,2,3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクスマガジン1,2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などの媒体を通じ野球界への提言を行っている。 - 最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。