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第5回 キューバ出身のプレーヤー達の未来2014年07月16日

 たとえば シカゴホワイトソックスのホセ・アブレイユ選手、アレクセイ・ラミレス選手、オークランドアスレチックスのヨエニス・セスペデス選手、ロサンゼルスドジャースのヤシエル・プイーグ選手などといった今メジャーでも強打者といわれるキューバの選手たちがずらっと勢揃いしているのだ。

 キューバにとって、野球は国技と呼べる存在である。特に、社会主義政権を成功させた国家元首のフィデル・カストロは、自身も野球が非常に得意だったため、野球の振興には特に力を入れていた。現在でも小学校から大学まで野球は必須科目となっており、国民の間で圧倒的な人気を誇っている。
またトップクラスの選手は全員国家公務員であり、給料もよく、あまり豊かな生活をしていない一般国民にとって憧れの存在である。そのため質の高い選手が数多くおり、国際大会などでは数多く優勝している。

 しかし、いくら高給取りといわれていてもメジャーで活躍する選手たちと比べると報酬は格段に少なく、そのためトップクラスの選手の中には、身の危険をおかしてまでアメリカへ亡命を図り、メジャーでプレーを希望する選手たちがキューバでは後を絶たなくなってしまった。
選手達は亡命エージェントの手引きでボートに乗ってキューバを脱出するか、あるいはナショナルチームの遠征先で米国大使館に駆け込んで亡命している。このような非合法に“脱出”する手段は、選手側にとっても様々な危険が伴うものだった。

 テキサス・レンジャーズに所属するアレックス・リオス選手はメキシコに亡命し、そのあとMLBと契約することになるが、その際間に立ったエージェントに拉致され、自身の身の危険をおかしてまで、MLBにやってきた亡命選手の1人である。

 また亡命に失敗すれば選手生命を断たれることになり、成功しても残してきた家族との再会はかなわず、そのため、家族も亡命させるためにエージェントからさらに莫大な経費を要求されるという事態も起こっていた(ただし亡命選手の再入国に関しては一昨年に規制緩和されて、一定条件を満たして8年以上経過した選手は、帰国を許されるようになった)。

 そんな中、2013年のシーズン中に、キューバ政府が野球を含むスポーツ選手の国外プロ活動を認めると発表。キューバは1959年のキューバ革命から共産主義に転じ、1961年から、プロ活動を禁止。特例を除き、自国内に限っての競技活動を認めるという法令を発布したため、今までキューバの選手がメジャーリーグをはじめとする海外で野球をするには亡命するしか手だてがなかったが、この制度により自身に危険をおかすことなく、海外でプレーすることが可能になったわけである。

 というのも今まで、国がいかに人材の流出を抑えようとしても毎年、ナショナルリーグの遠征に出た選手たちによる亡命者が続出しており、昨年のWBC代表だけでも4人がメジャーリーグ入りを目指して亡命してきた。キューバのラウル政権は今回の発表によって、国の威信にも関わる亡命者をなくし、同時に優秀な人材の代償として外貨も手に入れられるシステムを構築したといえる。野球でいうところのピンチをチャンスに変えるまさにダブルプレーを行った形だ。

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プロフィール

中薗麻衣
中薗麻衣
  •  ニューヨーク在住6年目。現在、ニューヨークのTVプロダクションに勤務し、MLBをはじめNBA, NFLなどアメリカンスポーツ取材を2010年より行い、日本向けに、コラム執筆、取材リポート、映像編集、番組コーディネート業等、幅広く活動している。

     NHKスポーツニュース番組、「おはよう日本」スポーツコーナーMLBスプリングトレーニング等他多数。週刊ダイヤモンドオンライン「アメリカンスポーツビズの歩き方」コラム執筆、週刊NY生活「MLBコラム」、週刊NY生活TV、テレビ東京「海外いくならこーでね~と!」出演など。

  • twitter:@Maia_K_Nakazono

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