第8回 【侍ジャパン強化試合】日本vsメキシコ「前夜から一転、メキシコに大勝!立役者は、大谷翔平」2016年11月12日

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 11月11日、侍ジャパントップチームは、来年3月に開催される第4回ワールドベースボールクラシックに向けて、メキシコ代表と強化試合を行った。結果は11対4と、前日のうっぷんを晴らすかのような快勝。その立役者は、やはりあの男、大谷 翔平だった。

本格化する大谷翔平の二刀流

大谷 翔平(北海道日本ハムファイターズ)

 昨日、序盤の拙攻が祟って3対7で完敗した日本代表が、この日は序盤から効率よく得点を加えていき、11対4で完勝した。勝利の立役者は3番・指名代打でスタメン出場した大谷 翔平(北海道日本ハムファイターズ)だろう。1回表は2死走者なしの場面で先発・ロドリゲスが投じた115キロのチェンジアップをレフト線に運び、中田 翔(北海道日本ハムファイターズ)のタイムリー二塁打を呼んだ。3回には先頭打者として四球を選び、筒香 嘉智(DeNA)のライト前ヒットで三塁に進み、坂本 勇人(巨人)の犠牲フライで生還。

 5回はさらに凄みがあった。左腕・ロドリゲスから一塁ゴロを打つのだが、一塁手のナバーロは猛然と一塁ベースに向かってくる大谷に恐れをなしたのか捕球したままなすすべもなく内野安打とし、中田の2球目に二盗を成功させ、中田の一塁ゴロで三進後、筒香の一塁ゴロで生還してしまった。内野安打→二盗→三進後の一塁ゴロで得点という経過を見れば、大谷1人で1点をもぎ取ったと言ってもいい。7回にも四球で得点に絡んでいる。

 この八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍をどのように表現したらいいのだろう。大谷は野手であるとともに投手でもある。私はスライディングによる故障が一番怖い。しかし、そんなことに大谷はまったく頓着していないように見える。そして、このチーム初盗塁が呼び水になったのか、6回表に菊池 涼介(広島)が二盗、8回表には中島 卓也(北海道日本ハムファイターズ)が三盗を決めている。大谷は単なる主力野手というだけでなく、チーム内の空気を変えるムードメーカーの役割も担っているのだと思った。

 ちなみに、メキシコとの強化試合が行われる前日の11月9日、日本代表の練習が東京ドームで行われ、大谷はフリーバッティングで16スイング中、柵越えを5本記録している。ネット裏の客席に向かって打つディーバッティングではスイングの速さや空気を切り裂く音が中田、筒香をしのぎ、大谷の“二刀流”が本格化しているのがわかった。

 大谷以外では筒香の安定感が光った。敗れた1回戦では3点中、2点を叩き出したのが筒香のバットで、この日は5回打席が回って3打数1安打1打点という成績。四球2つの場面はいずれも走者が二塁にいるときのもので、勝負して大ケガしないようというバッテリーの心理が透けて見える。

 メキシコの攻撃に注目すると、4回までの得点がすべてソロホームランだったことが惜しまれる。2回が4番アマダー(楽天)のライナーでレフトスタンドに飛び込むソロ、4回が2番ペーニャの右中間へのソロ、さらに同じイニングにベルドゥーゴのライトスタンドに飛び込むソロ、という具合である。1本でも走者を置いた場面で出ていたら展開はまったく違ったものになったと思う。

 この3本を打たれた野村 祐輔(広島)にはいい経験になった。アマダーの一発は132キロの変化球、ペーニャの一発は128キロの変化球、ベルドゥーゴの一発は135キロのストレート系の変化球と、すべて異なる球種を打たれたのが野村にはショック。アマダーに打たれたあと、思い出したように投げ始めた111キロ台前半のカーブがこれからの野村にとっては重要な球種になるだろう。テーマは緩急である。

(文・小関 順二

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プロフィール

小関 順二
小関 順二
  • 出身地:神奈川県横須賀市生まれ。
  • ■ プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。ストップウオッチを使った打者走者の各塁走塁、捕手の二塁スローイングなど各種タイムを紹介したのも初めてで、現在は当たり前のように各種メディアで「1.8秒台の強肩捕手」、「一塁到達3.9秒台の俊足」という表現が使われている。
  • ■ 主な著書に『プロ野球問題だらけの12球団』(年度版・草思社)、『プロ野球スカウティング・レポート』(年度版・廣済堂あかつき)、『ドラフト物語』(廣済堂あかつき)、『野球力』(講談社+α新書)、『プロ野球サムライたち』(文春新書)などがある。
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