第3回 【プレミア12特別企画】 優勝投手・大塚 晶文氏が振り返る「第1回ワールド・ベースボール・クラシック」(後編)2015年11月17日

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【目次】
[1] サンディエゴの仲間に恩返しを
[2] 世界でたったひとつの偉業

 現在、日本・台湾の共同開催で盛り上がりをみせている「第1回 WBSCプレミア12」。連日連夜の侍ジャパンの活躍に、日本中から熱い注目が集まっているが、今回はプレミア12特別企画として、今から9年前に行われた「WBC第1回大会」の胴上げ投手となった大塚 晶文氏(現・中日ドラゴンズコーチ)に、当時のWBC大会での思い出をたっぷりと語っていただいております。【後編】では、2006年の第1回WBC決勝戦のお話を中心にお伺いしました。

サンディエゴの仲間に恩返しを

ペトコパーク

 緊迫したマウンドに向かうまでを想定し、大塚は完璧な準備ができていた。思い入れのあるペトコ・パークで投げるにあたり、大塚にしかできない壮大な計画を立てていた。
「いつもクローザーのトレバー・ホフマンが出てくると、登場曲の『Hells Bells』がかかって、鐘の音がゴーン、ゴーンと流れます。そうすると、球場が『ワァー』って沸くんですよね。『いいなあ』って思っていました」

 大塚はホフマンに電話をかけ、「登場曲を使っていいか」とたずねた。パドレスの守護神は快諾すると、セットアッパーを務めていた仲間に最高の叱咤を送った。
「いつもはトレバータイムだけど、アキタイムにしてこい!」

 試合は初回、日本が4点を先制する。その裏に1点を返されたものの、5回に2点を追加し、チームのボルテージは高まる一方だった。
だが、大塚は「そんなにとらなくていいよ」と思っていた。なぜなら王監督に「8回から行くぞ」と声をかけられた頃から、「1点差で回ってこい」と念じていたからだ。

 ただでさえプレッシャーのかかる決勝で、大塚はなぜ僅差での登板を願っていたのだろうか。
「カッコいいじゃないですか(笑)。3点差、中途半端なところを抑えてもしょうがないし。逆に、1点差で無死満塁くらいのところで回ってこい、ですよ。本当の究極は、そこで3つ三振をとるのがいい。そうやって考えながら、自分が演技をするんです」

 8回一死、リリーフに上がった藤田 宗一がフレデリク・セペダに2点本塁打を打たれ、1点差に迫られる。
ブルペンの大塚は、そのときに備えていた。肩を作り、いつもの呼吸法でメンタルをコントロールし、イメージトレーニングを行う。決戦の舞台に立つため、自らに気合を注入した。

 出番を告げられたのは、想定通り1点差の局面だ。ペトコ・パークにAC/DCの『Hells Bells』が大音量で流れ、鐘の音が響く。ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン。
「うわぁ、すごい」
大塚が胸を踊らせると、サンディエゴの観客は日本の守護神登場に沸いた。地元ファンの「アキ!アキ!」という声援を受け、大塚はさらに気持ちを高める。

「王さんとイチローと一緒に、ペトコでできている。トレードで移ったけど、その恩返しをサンディエゴのみんなにできる。1点差で回ってきて、『こう抑える』というイメージもありました。強気、冷静、ワクワク、感謝。マウンドで結果を残すための4つの感情が、全部ありましたね」

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