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第10回 【小関順二のドラフト指名予想】福岡ソフトバンクホークス「競争心を煽らせるために即戦力投手の指名を!」2016年10月19日
福岡ソフトバンクホークス 今季戦績
143試合 83勝54敗6分 勝率.606 パ・リーグ2位
大砲不足が課題も、今年は投手主体の指名か

中村晃(福岡ソフトバンクホークス)
■課題
過去2年、高校生主体の指名を行ってきた。強い球団だからこそできた将来性志向だが、16年シーズンを記録的な逆転負けで優勝を逃し、雲行きが変わっていきそうだ。野手では2年契約が終了したロッテのデスパイネ、メジャー1年目でそれなりの成績を収めた李 大浩の獲得に向かうなどマスコミの報道が喧しい。そう書かれるのは4番を任せられる真の強打者がいないからだ。
最後まで覇権を争った日本ハムは86本塁打、274打点を挙げた大谷 翔平、中田 翔、レアードが得点源を担ってるが、ソフトバンクは松田 宣浩の27本塁打が最多で、20本塁打以上記録する選手は他にいない。それでいてチーム本塁打が114(とリーグ3位)と少なくないのは、平均値の長打型の選手が多いということ。つまり相手投手陣に対する威圧感がない。そしてこの課題を埋める強打者は今年のアマチュア界にはいないので、1、2位の上位指名は投手、3位以下で野手主体という指名になっていきそうだ。
■過去の指名選手の状況
14、15年に上位指名で獲得した高校卒の松本 裕樹(投手)、栗原 陵矢(捕手)、高橋 純平(投手)小澤 怜史(投手)の成長具合が気になる。近年、高校卒でも一軍登場は3年以内という選手が増えている。過去2年間に獲得した11人のうち10人が高校生というのは競争心を煽るより、「あいつがまだファームなので俺もまだいい」――そういう甘えを生まないだろうか。雑音を封じるためにも、松本と高橋はあまりのんびりしてはいられない。自分たちの成長スピードが球団の指名戦略を変えていく恐れがあると認識するべきである。
振り返ると分離ドラフトの05~07年の3年間の指名は凄かった。05年は松田 宣浩(希望枠)、本多 雄一(大社D5巡)、06年は福田 秀平(高校生D1巡)、大隣 憲司(希望枠)、森福 允彦(大社D4巡)、長谷川 勇也(大社D5巡)、07年は岩嵜 翔(高校生D1巡)、中村 晃(高校生D3巡)と、毎年その後の主力選手を複数人獲得しているのだ。08年以降ははっきり言ってその数が減っている。
■どんな選手を1位で指名するべきなのか
投手は武田 翔太、千賀 滉大、和田 毅、バンデンハークという4つの柱がデンと立ち、脇で支える中田 賢一、攝津 正、東浜 巨、大隣の顔ぶれも文句なし。リリーフ陣も充実し、抑えのサファテに引き継ぐ中継ぎ陣はスアレス、岩嵜 翔、森 唯斗、五十嵐 亮太と勝ちパターンの人材が揃っている。これほど充実しているなら今年も高校生主体でよさそうなものだが、ものすごく大きな柱に育ちそうな即戦力候補が今年はいる。田中 正義(創価大)だ。
外れたら高校生主体に戻していいし、地元九州の超高校級捕手、九鬼 隆平(秀岳館)に向かっていってもいい。捕手はただでさえ人材不足の泣き所である。そう考えるといろいろなことが考えられるドラフトで、スカウトは楽しんでいるのではないだろうか。
(文・小関 順二)

- 小関 順二
- 出身地:神奈川県横須賀市生まれ。
- ■ プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。ストップウオッチを使った打者走者の各塁走塁、捕手の二塁スローイングなど各種タイムを紹介したのも初めてで、現在は当たり前のように各種メディアで「1.8秒台の強肩捕手」、「一塁到達3.9秒台の俊足」という表現が使われている。
- ■ 主な著書に『プロ野球問題だらけの12球団』(年度版・草思社)、『プロ野球スカウティング・レポート』(年度版・廣済堂あかつき)、『ドラフト物語』(廣済堂あかつき)、『野球力』(講談社+α新書)、『プロ野球サムライたち』(文春新書)などがある。
- ベースボールファン(有料コラム)では、「野球を歩く」を寄稿、野球ファン必見の野球歴史コラムを配信している。
- ■ 小関順二公式ブログ

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