第17回 社会人野球ドラフト特集「今年はポテンシャル重視の1年に」2017年10月25日
【目次】
[1]今年は速球派が数多く揃う年に
[2]藤岡裕大、田中俊太の日本代表の二遊間コンビなど逸材が多い
社会人野球の選手といえば即戦力として期待がかけられる選手が指名されるが、今年は即戦力度というより、素材に魅力がある投手が多い。投手は単純で近年の中でナンバーワンといえるほどボールに力のある投手がそろった年で、プロの育成次第では豊作年だったと思わせる年になるかもしれない。
今年は速球派が数多く揃う年に

田嶋 大樹(JR東日本)
田嶋 大樹(JR東日本)はダントツの1位候補で、競合になっていてもおかしくない選手だ。高校時代は爆発力あるストレートは、大学・社会人の投手と比較しても飛びぬけていて、投手らしい俺様キャラが漂った投手だった。ただ、社会人3年間で人間的にも、投球面でも大人となった。140キロ前後のストレートの時もいれば、140キロ後半のストレートで押すなど、ピッチングで押し引きがうまくなった。そして、スライダーだけではなく、カーブなど複数の変化球を投げることができ、21歳にしてはだいぶ完成された投球ができるようになった。高校時代のようなスタイルもいいが、プロではそれらをhybridしたピッチングが望まされるだろう。
1位候補に挙がるのが鈴木 博志(ヤマハ)。単純にいえば、今年のドラフト候補の中で最も速い投手で、いわゆるロマンがある。どの試合を見ても、リリーフで投げれば、150キロ~155キロ。さらに140キロ台のフォーク。フォームを見ても、上半身と下半身の連動性が取れたフォームであり、その持ち味を生かすことができれば、そのまま球界屈指のセットアッパー、クローザーになりうる逸材で、世界クラスのポテンシャルがあるので、小さくまとまらず、いずれは160キロ狙える素材となってほしい。即戦力のような数字を求めるのではなく、まずは自慢の球速を生かせる投球術を二軍で身に付けてから、勝負しても遅くない投手だ。
即戦力候補として期待したいのが、谷川昌希 (九州三菱自動車)。BFAアジア選手権では、優勝に貢献。足上げ、体重移動、テークバック、リリースポイント、どれも素晴らしい投手。力をしっかりと引き出した140キロ後半のストレート、切れのある変化球はどれも一級品。アジア選手権のピッチングは出来過ぎというほどの内容だったが、その内容がプロでも持続できれば、一軍で活躍できる投手になるのではないだろうか。
鈴木 康平(日立製作所)も小さなテークバックからしなやかな腕の振りから繰り出す常時140キロ後半のストレート、130キロ後半の変化球とボール1つ1つの精度は一軍クラスの逸材。千葉明徳時代から光っていた才能を社会人の舞台でようやく開花させることができた投手だ。
奥村 政稔(三菱パワーシステムズ日立)は純粋に投げるボールは一軍クラス。小さなテークバックだが、上体を鋭く振り下ろすメカニズムをしており、常時140キロ後半(最速154キロ)のストレートは威力があり、140キロ前後のスライダー、フォークはプロの投手と比較してもレベルが高いと思わせるものがあり、下位に終わった球団の投手のレベルを見ると中継ぎならば即戦力で期待できる投手だ。斎藤 俊介(JX-ENEOS)は、常時140キロ前半のストレート、切れのあるスライダー、カットボールで勝負する右腕。下半身主導で動く投球フォームは高校生のお手本となるような投手。柏原 史陽投手 (JX-ENEOS)も、常時140キロ後半を計測する速球派右腕で、力のあるリリーバーとして期待できる投手。
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- 編集長 河嶋 宗一
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