第7回 アメリカ独立リーグの現実:苦境に立たされる弱小リーグ(下)2014年02月21日

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【目次】
[1]「プレー」という商品と「身近な娯楽」というキャッチコピー
[2]底辺に向かって拡大しつつあるプロ野球の裾野
[3]独立リーグ界で進む「階層化」

独立リーグ界で進む「階層化」

 ペコス・リーグの現状を私が多少なりとも知っているのはほかでもない。フリーダム・リーグの試合場でこのリーグでプレーしたある選手に出会ったからである。
 彼はグットイヤースタジアムにいた15人の観客のひとりだった。ペコス・リーグの終了後、新たなプレー先を探してアリゾナにやってきたのだという。彼がプレー先として選んだフリーダム・リーグもまた「負け組」リーグのひとつであることは間違いない。
 リーグ当局は、パシフィック・アソシエーションとの交流戦は来年も続ける意向である。来年はハワイだけでなく、BCリーグとの交流戦も念頭においているという。しかし、この試合の現実を目の当たりにすると、正直、その壮大な計画も絵空事に思えてならない。

 フィールドに目を移してみる。両チームのロースターには元メジャーリーガーも含まれると言うが、一見しただけでは、どの選手がそれに該当するのかわからない。「元メジャー」と言っても、わずか数試合途中出場しただけの選手もいるだろう。もはやMLB球団との再契約の見込みのほとんどないようなロートル選手でもそれを名乗ることができる。
 

 そのほとんどがルーキー、あるいはMLB球団との契約経験のないもので占められているこのリーグで、さほど目立つこともないことからは、「元メジャー」選手の現在の力量がうかがい知れる。また、このリーグからもMLB傘下の球団へはこれまで7名が巣立っているが、MLBのスカウトのお眼鏡にかからなかった残りの者たちが繰り広げるゲームからは正直魅力を感じることはなかった。

 目を転ずれば、ずいぶん向こう、メイン球場から幾分離れたフィールドのナイター照明が目に入った。ここで春季キャンプを張るレッズのルーキーチームがリーグ戦を行っていたようである。MLB傘下のルーキリーグ、アリゾナリーグは、スタジアムではなく、練習フィールドで主に公式戦を行い、観戦料はかからない。
 技量的にほぼ同等と思われるフリーダム・リーグの試合の観戦チケットは7ドル。球場も決して交通の便の良い場所にあるわけではない。集客に苦労するのはある程度目に見えていたことだろう。今一度言うが、この夜のスタンドの風景は、先に解散した関西独立リーグの球場の風景そのものだった。

フリーダムリーグの試合の様子

 ただ、関西と違い、フリーダム・リーグは選手に報酬は支払っている。リーグ当局によれば、彼らの報酬は月1000ドルから2000ドルの間という。しかし、今年初めてプロキャリアをスタートさせたという23歳の選手は800ドルしかもらっていないと言っていた。このあたりは、リーグは選手にアパートと朝食と試合前後の食事を提供する代わりに、月300ドルほどを徴収しているというから、つじつまはあうが、たった3か月ほどのリーグ戦でこれだけの報酬しかもらっていない選手が、「プロ野球選手」と言えるのだろうか。間口の広いアメリカ野球の現実を思い知らされた今回の取材だった。

 しかし、「負け組」リーグが存在し、夢をあきらめない若者がいるからこそ、「堀り出しもの」が出現するのもまた現実である。日本で言えば、四国アイランドリーグなしには、又吉 克樹(中日ドラフト2位、独占インタビュー 2013年12月3日公開【前編】2013年12月10日公開【後編】)は現れなかったのである。

 最後に日米をまたにかけたある元独立リーガーの台詞を紹介しておこう。
「確かに、日本でもアメリカでも、独立リーグにはどうしようもなくレベルの低い選手はいますよ。そういう選手を見て、何しに来たのかなって思うことも多かったです。それでも、独立リーグが増えていくことには僕は賛成です。底辺の拡大っていう点では、いいことじゃないかな。彼らはプロ選手としてはダメだけれど、引退後野球をいろんなところで普及してくれれば、野球にとっては有用な存在になってくれますから」

 この言葉は、日本の独立リーグにも大きな示唆を与えるのではなかろうか。

(文・石原豊一)

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